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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第24章 照らされた道



「ふみのさんは…苺以外で、
 何が好きなの?」

「 ! い、苺以外に、ですか…?!」

咄嗟の質問に、
何を答えていいか分からなくなってしまったが、
そこに聴こえてきたのは、
波打ち際にゆるやかに押し寄せる波の音だった。


「…海です。海が好きです。
 小さい頃、両親と一緒に出かけた海が大好きで。
 …今でもよく、思い出します」


無一郎はぽつりぽつりと話すふみのの横顔を
何も言わずに静かに見つめていた。
その横顔は、少し淋しく見えた。


「…ふみのさんにとって、
 大切な思い出なんだね」

「ええ。今でも初めて海に浸かった時の冷たさが
 感じられるような気がします。
 …きらきら青く光る、水面がとっても綺麗なんです」


久しぶりに海の青さを思い出したふみのの心には
その時のときめきも一緒に蘇るようだった。

「僕は山で育ったから、
 海をまだ見たことがなくて。
 …ふみのさんの話しを聞いていたら、
 見てみたくなってきた」

「…そうだ!私の部屋に海の絵があるんです!
 良かったらご覧になりますか?」

「…!」

無一郎の瞳がきらきらと輝くのが分かった。
それは弟の健一郎が見せた
嬉しい時の反応とそっくりで、
ふみのは思わず目を見開いた。


「…本当に、そっくりだわ…っ」


思わず声に出してしまったふみのは
はっと口元を手で塞いだ。

「?? そっくり…??」

何のことかさっぱり分からず、
疑問符が脳内に溢れる無一郎。

「ご、ごめんなさい!突然変なこと言って…。
 …私には、三つ下の弟がいたんです。
 名を健一郎と言って…。
 その、…無一郎くんと、とても容姿が似ていて。
 偶然にも、無一郎くんと健一郎の反応が
 とても似ていたので、びっくりしてしまって…」

自分の家族のことをすみませんと詫びるふみの。
そういうことだったのかと、
今までのふみのの表情が表す意味を
無一郎は漸く理解できたのだった。

「…そうだったんだ。
 そうしたらふみのさん、
 …きっと、辛かったよね」

「…? “辛かった”…??」

「…だって、僕のことを見るたびに、
 …弟さんのことを、思い出していたんでしょ?
 悪いことしたなって、思って」

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