火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第24章 照らされた道
そう言いながらぱくぱくと箸を進める無一郎を見て、
ふみのはどうしても
弟の健一郎とその姿を重ねてしまうのだった。
健一郎もこんなふうに、
黙々とご飯を食べていたっけ…
懐かしさから、ふみのの視界がうっすらと滲んだ。
「…ふみのさん?
どうしたの?」
気付くと無一郎がじっと
ふみのを見つめていた。
「い、いえ!何でも、ないです!
す、すみません、お茶が出てなかったですね!
今お持ちします!」
「……?」
ふみのは顔を見せないように台所に向かったが、
無一郎はその一瞬のふみのの表現を見落とさなかった。
…? 何だろう…
ふみののその表情の裏に隠された何かに
引っかかる無一郎だったが、ただひたすらに
目の前のふろふき大根を頬張った。
食後、ふみのと無一郎は縁側で
芋羊羹を並んで食べた。
会話はそんなに多くはなかったが、
ぽつぽつと自身のことを話してくれる無一郎が
可愛らしかった。
「無一郎くんは、山で育ったんですね。
緑に囲まれて暮らすって素敵です」
「うん、自然の中で暮らすって
毎日色々な変化があって楽しかったよ。
…鬼殺隊に入ってからは
初めて見たものもたくさんあって…、
なかなか慣れないこともあったけど」
「そっか…、でもひとりで鍛錬を重ねて…。
無一郎くんは本当にすごいですね」
「僕なんか全然だよ。
他の柱の人達も
血を吐くような努力をしているだろうし。
…もちろんふみのさんも。
光の呼吸ってだけですごいと思うし、
それに対してちゃんと向き合ってるしさ」
「私なんか、まだまだです。
腕もまだ完全ではないですし、
皆さんにご迷惑かけてばかりです…」
「そうかな?
ふみのさんの柱稽古、
すごく為になるって、皆が言ってる。
何より皆の集中力が今までと比べ物にならないよ」
一心不乱に、目の前の鬼を倒すことに、
刀を奮ってきた無一郎。
大切な家族を失いながらも、
死に物狂いで己を叩き上げ、
柱へと昇格していったのだ。
こんな小さな身体で、
その日々を乗り越えてきたのかと思うと、
ふみのの胸がぐっと締め付けられた。