火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第24章 照らされた道
今日は朝の稽古だけだったので、
ふみのは午後から台所でひとり
明日の隊士達の昼食の下拵えをしていた。
そして以前蝶屋敷にて霞柱・時透無一郎と交わした
“ふろふき大根”を作る約束を果たすべく、
その調理も進めていたのだった。
(本当は屋敷に招待してあげたかったけれど…
時間も取れないし、これしか方法はないわよね…)
本来であれば無一郎を屋敷に招き、
ふろふき大根を振る舞おうと思っていたのだが
無一郎の稽古の妨げになってはならないと思ったふみのは
完成したふろふき大根を霞柱邸へと
届けようとしていたのだった。
火にかけた鍋から立ち上る白い湯気の隙間に見える
ふつふつと煮える白い大根たち。
最後の味付けも整い、
大根にかける練り味噌の用意もし終えた時だった。
「ふみのーーッ!!」
「! 杲(ひので)さん!」
台所の小窓に杲が飛んできた。
「イ、今!ソコニ!霞柱ガ通ッタ!
今ナラ此処ニ、呼ベルヤモ!!」
「!! 本当?!
杲さん!私、ちょっと追いかけてみる!」
「承知シタ!」
杲は勢いよく窓から飛び立つと、
無一郎を目掛けて羽ばたいた。
ふみのも鍋の火を止め家を出ると、
駆け足で杲の飛ぶ方向に走った。
「…ふろふき大根…?…今から?」
「ハイッ!今、ふみのガ作ッテイテ!
是非、オ立チ寄リイタダキタイノデス!」
無一郎に一足早く追いついた杲は、
少しの時間をもらえないかと必死に頼み込んでいた。
「……」
「…ヨ、寄ッテ、イタダキタイノ、デスッ!!」
無言のままの無一郎に戸惑う杲。
無一郎もふみのの好意に嬉しさが込み上げるが、
どう返事をしていいか分からず固まってしまった。
「無一郎くん!!」
「…! ふみのさん…!」
無一郎がくるりと振り返ると、
道の奥からふみのが走ってくるのが見えた。
「ご、ごめんなさい!急に引き止めてしまって…!
あのっ、ふろふき、大根を、作ったの…!
もし、良かったら、
召し上がっていきませんか…?!」
走ってきた後で息を切らしながらも
笑顔で話すふみのに
無一郎も嬉しさが隠せなかった。