火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第24章 照らされた道
申し訳なさそうにするも
抑え堪えていた気持ちを伝える杏寿郎。
それはふみのも同じだった。
「わっ、私も杏寿郎と一緒に…、
一緒に、いたいの…っ!」
ふみのの返事に杏寿郎は目を細め、
そのままそっと、口づけを落とした。
そしてその口づけはふみのと杏寿郎だけが知る
やさしく甘い夜へと誘(いなざ)う。
「…ふみの。
心からふみのを愛している」
「私も杏寿郎が大好き。
…愛してる。この先もずっと」
愛するひとのぬくもりに包まれる幸せに
二人は何度も何度も、互いの愛を伝え合った。
その後も、連日のように柱稽古は続き、
隊士達もその怒涛の鍛錬に悲鳴を上げながらも、
徐々に剣術や呼吸の使い方を身につけていった。
ふみのの瞑想の稽古を受けた後から
呼吸の威力が格段に増したという隊士が何人も見受けられ、
ふみのの稽古に繰り返し
参加する隊士も見られるほどだった。
杏寿郎の継子となり、
柱稽古と並行に鍛錬を続けていた炭治郎も
日々“ヒノカミ神楽”の核心へと迫っていた。
ふみのと杏寿郎は同じ屋敷内で生活をしてはいるものの、
柱稽古の忙しさから日中は殆ど顔を合わすことがなかったが、
その分二人は夜の束の間の時間を愉しんだ。
たわいもない話をしながら眠りにつき、
そして朝になれば眩しい陽光が部屋に差し込んでくる。
その煌めく眩(まばゆ)さにふみのが目をあければ、
杏寿郎が優しく微笑み、髪を撫でてくれた。
朝陽が届けてくれる言葉にできない幸せに
二人は毎朝その喜びに浸っていた。
しかし、穏やかな二人の時間とは裏腹に、
柱稽古となれば、鬼は今も尚この世に
存在しているという現実を感じざるを得なかった。
誰もが鬼の殲滅のために、その先の未来のために、
そして人々の倖せのために、刀を握り締め、
悪しき鬼のために懸命に刃を振るった。
それは鬼殺隊にいる隊士全員が同じ想いだった。
その想いを貫く強さは、
皆の団結力を一層高めていった。
とある日の午後。
杏寿郎は炭治郎の稽古へ、千寿郎は槇寿郎と
夕飯の買い出しへと出掛けており、
屋敷にはふみのだけが残っていた。