火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第24章 照らされた道
「杏寿郎のお陰で助かったわ!
手伝ってくれてありがとう」
「少しでもふみのの役に立てたのであれば何よりだ!
今日は初稽古で疲れたろう。ゆっくり休むといい」
「杏寿郎も忙しかったのに、
稽古を見にきてくれてありがとう。
また明日も、引き続き頑張ります!」
「うむ!だが無理は禁物だ。
ふみのの思うようにやれば必ず上手くいく!」
「うん!」
すると杏寿郎の手が伸び、
ふみのの前髪をやさしく掻き分けると、
額へと口づけを落としてくれた。
「…お休み、ふみの。
良い夢を」
額に触れたあたたかい口唇に
ふみのは頬を染めながら、
杏寿郎の浴衣の袖口をきゅっと引いた。
「…さ、最後に、
…ここにも、…くれませんか…?」
するとふみのの細い指先が
自身のうすく色付いた桃色の唇へと伸びた。
顔を真っ赤にして上目遣いをするふみのに
杏寿郎は目を細めると、ふわりと口元が綻んだ。
「勿論。
…最後と言わず、何度でも」
杏寿郎はふみのの手を握り、
甘い口づけを落とした。
そしてそっと触れた互いの口唇は離れることなく、
さらに二人の熱が交わり、深くなる。
ああ だめだ
私
杏寿郎から
離れられない─────…
甘い熱が総身に伝い、
目眩とともに溶けてしまいそうになる。
ふみのの手を握る杏寿郎の手にも力が入った。
共に同じ時間(とき)を過ごせる幸せも
身体を重ねながら眠りにつく甘美な夜も
二人は知っているのだ。
息を求めるように二人の口元が離れると、
乱れた呼吸がさらに互いの熱(ほて)りを加速させた。
「…すまない、つい…っ」
「う、ううん…っ!
私も強引にごめんなさい…。
……で、でもっ、…、」
「…“でも”?
…ふみの?」
その続きが恥ずかしさからなかなか言い出せず
ふみのは俯いてしまう。
その先の言葉を知る杏寿郎は
俯くふみのの顎をそっと上げさせた。
「…明日は少々早いが…。
このままふみのと一緒に居たいと言ったら、
…我儘になってしまうだろうか?」