火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第24章 照らされた道
「…杏寿郎?」
「ん?どうした?」
杏寿郎の少し揺れているように見えた緋色の瞳が
ふみのに向けられた。
ふみのはしずかに、
食器を洗う杏寿郎の手に自分の手をそっと重ねた。
「…これからも、杏寿郎が食べたいときに、
いつでもさつまいものおむすびを作るし、」
杏寿郎の目がはっと見開くと
ふみのは一呼吸おいて、その続きを話した。
「杏寿郎の傍には私もいるし、
槇寿郎様も千寿郎くんもいる。
いつでも、杏寿郎と一緒にいるからね」
いつしか杏寿郎の手を握るふみのの手に
力が入っていた。
ふみのがそれに気付くと、
はっと手の力を緩めた。
「ご、ごめんなさいっ!
なんだか、うまく言えなくて…っ」
杏寿郎を慰めたい気持ちはあるのに、
思うように言葉が出てこず、
ふみのは己のやるせなさにぎゅっと目を瞑り、
もう片方の手で拳をつくり、自らの頭をぽこんと叩いた。
杏寿郎はそれを見て、濡れた手を手拭いで拭うと、
ふみのの頭をそっと撫でてくれた。
「…ふみの?
俺はふみのがそう思ってくれているだけで、
十分すぎるほど幸せだ。
こんなにも心強いことはない。
…いつもありがとう、ふみの」
杏寿郎の声があまりにもやさしくて、
ふみのは思わず泣きそうになってしまった。
熱くなる目頭を堪えながら、
ふみのは杏寿郎の頬に片手を添えた。
「私、杏寿郎が大好きよ。
こちらこそ、
いつも傍にいてくれて、ありがとう」
杏寿郎を護りたいと
思うその気持ちは増すばかりだ。
ふみのの言葉に、
杏寿郎の胸も熱くなる。
「俺もふみのが
何よりも愛おしい。
…また明日も共に頑張ろう」
「うん…!」
微笑み合う二人の額が
こつんと触れる。
僅かな時間でさえも共に過ごせば、
それは愛おしく至福な時に変わるのだ。
たとえそこに言葉がなくとも、
寄り添う二人なら通ずる想い。
この想いはこの先も、
決して色褪せることはないと
二人はそれぞれの胸の中で固く誓った。
二人はその後の仕込みも手際良く済ませ、
杏寿郎はふみのを部屋まで見送った。