火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第24章 照らされた道
「…っわ、私も、負けないくらい、
杏寿郎に、とっても心惹かれているんだからっ!」
照れながらも、むうっと顔を膨らませるふみのが
尚の事可愛らしくて杏寿郎は思わず吹き出してしまった。
「はは!ふみのもそんな顔をするとはな!
…つまりふみのと俺は、
心から互いに惹かれ合っているということだな?」
杏寿郎は嬉しそうに笑みを浮かべ
ふみのをじぃっと見つめる。
今度は杏寿郎がふみのに詰め寄り、
二人の距離が一層近くなる。
ふみのの頬はさらに赤く染まった。
「〜〜〜…っ!
…きょ、杏寿郎の、おっしゃる通り、です…っ」
杏寿郎が満足げににっこり微笑む。
「うむ!
ふみのはどんな表情も愛いな!!」
「〜〜〜…っ」
嬉しそうな杏寿郎の笑顔は
ふみのの心臓をときりと跳ねさせた。
その笑みに自然と
ふみのも笑顔になる。
…ああ、私はやっぱり
杏寿郎のこの笑顔には敵わないわ…!
互いに忙しくあるものの、
こうやって何気ない時間を共に過ごせるのは
何にも変えられない幸せだ。
ふみのと杏寿郎心は
ささやかな喜びにふんわりとあたたまった。
「…今日、」
「ん?」
手元の食器に視線を戻し、
ぽつりと呟く杏寿郎にふみのは首を傾げた。
「ふみのが作ってくれた
さつまいもの握りを食べていた時、
…昔の、母上のことを思い出していた」
「…瑠火様のこと?」
「うむ。
母上も、父上との稽古の合間に
よくさつまいものにぎりを作ってくれてな。
…懐かしくなってしまった」
杏寿郎が時折見せる、
目を細めながら切そうに微笑む笑顔。
ふみのはその笑顔を見るたびに、
胸がきゅっと痛んだ。
きっと今までも、幾度も瑠火への想いを馳せながら、
決して触れることのできないそのぬくもりを
静かに思い返していたのかもしれない。
それを思うと
ふみのの目頭が熱くなった。
その想いは
ふみのとて同じだ。
母の、みちの纏うやわらかな香り、
やさしい声色、そしてあのあたたかな眼差し。
目を閉じれば昨日のことのように思い出される。
どれだけ時が過ぎようと、
母の愛情を超えるものは何もないのだ。