火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第23章 思いは光の架け橋へ〈後編〉
「…杏寿郎?」
「はい」
耀哉の瞼が薄らと開いた。
視力は殆ど失ってはいるものの、
その眼差しはとてもあたたかかった。
「これまで沢山の試練を
皆と一緒に乗り越えてきたね。
杏寿郎に出会えて本当に良かった。
心から、感謝しているよ。
築き上げた絆は、…永遠だ。
杏寿郎とふみの。
二人の絆が、互いを強くする。
それは離れていても、
想いが…二人を繋いでくれる」
ふみのと杏寿郎は
ただじっと耀哉の言葉に耳を傾けた。
「…真実は、それを捉えようとする瞬間に、
…儚くも、既に真実ではなくなってしまう。
…本当の真実というものは、
誰にも、分からないものかもしれないね…。
でも、…声に出さずとも、目には映らなくとも、
それを強く望めば、…きっとそれが真実になる。
─────…つっ」
耀哉は話し終えると、
苦しそうに胸を手で押さえた。
「「お館様!!」」
ふみのと杏寿郎は耀哉に近寄るが、
何も出来ない無力さに歯痒さを感じた。
耀哉の傍にいた女性は、
鞄から直様聴診器を取り出すと、
耀哉の胸元に当てながら、手首で脈を取り始めた。
すると徐々に、耀哉の呼吸も落ち着いてきた。
「…耀哉様。もう今日はお休みくださいませ」
「…そうだね。“あさ”。…ありがとう」
“あさ”と呼ばれたその女性は、
耀哉にやさしく微笑んだ。
「…ふみの、杏寿郎。
今日は来てくれてありがとう。
会えて…嬉しかった」
「私もお館様にお会いできて、お話ができて
とても嬉しかったです。
どうかご無理だけはなさらずに…っ」
「お館様の為にも、
一日も早く悪しき鬼どもを殲滅してみせます」
ありがとうと、
耀哉は最後に二人へと笑みを向けてくれた。
耀哉のやさしい声に、二人の目頭が熱くなる。
ふみのと杏寿郎は本部を後にし、帰路についた。
「…杏寿郎、あの、」
「ん?どうした?」
本部からの帰り道、それはいつもと同じ風景なのに、
ふみのの目には何故かいつもよりも淋しく映った。
「…ごめんなさい。
自分のすべきことを、
…ちゃんとやり遂げられるかなって、
少し不安に…なってしまったの」
不安げに俯くふみのの頬に
杏寿郎の手がやさしく添えられた。