火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第23章 思いは光の架け橋へ〈後編〉
会議を終え、
ふみのは杏寿郎と家に戻ろうと廊下に出たところ、
耀哉の娘の中で唯一黒髪の少女に声を掛けられた。
「一ノ宮様。
お帰りの前に申し訳ありません。
少々…お時間を頂いても宜しいでしょうか」
「はい…!もちろん大丈夫です!」
「ありがとうございます。
当主の耀哉より、
一ノ宮様にどうしても
お伝えしたいことがあるとのことで…」
「「 …! 」」
その言葉に
ふみのと杏寿郎は目を合わせた。
「宜しければ煉獄様にも
同席を願いたいのですが、宜しいでしょうか」
「はい、勿論です」
ありがとうございますと、
耀哉の娘は深々と頭を下げ、
二人を屋敷奥の部屋へと案内した。
「お館様。失礼致します。
一ノ宮です」
案内された部屋の襖をふみのは静かに叩くと、
待っていたよと、耀哉の弱々しい声が聞こえた。
ふみのはそっと襖を開けると、
そこには以前にも増して皮膚の爛れが悪化し、
包帯を全身に巻きつけた耀哉が横たわっていた。
その横には医者らしき女性が正座をしていた。
失礼しますと二人は布団の近くに腰を下ろした。
耀哉の容態に言葉を失う。
「…杏寿郎も…そこにいるのかな?」
「はい、ふみのと一緒に参りました」
「…来てくれて…ありがとう。
見苦しい所を見せて、すまないね…」
「いえ…っ、」
ふみのと杏寿郎はそれ以上、
何と声を掛けていいか分からなかった。
「…ふみのの腕が回復していると、
しのぶから聞いてね、」
本当に良かったと、
耀哉の顔に巻かれた包帯の隙間から
僅かに見える口元が微笑んで見えた。
「…私はもう、あまり長くはない。
ふみのに伝えたいことを、
今から…話したいと思う」
耀哉は一呼吸おくと、
一言ずつゆっくりと話し始めた。
「光の呼吸には…隠された謎が多い。
しかしきっと、それはふみのの力になる。
…どうか、この先も、
…皆の希望の光として、在り続けて欲しいんだ」
耀哉の言葉に、
ふみのは溢れそうになる涙を必死に堪えた。
「はい…っ、親方様のお言葉を胸に、
これからも鍛錬を怠らず、日々精進して参ります…っ」
耀哉は顔だけゆっくりと
二人のいる方へと向けた。