火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第4章 決意と別れ
「ふみの、あまり顔色が良くない、大丈夫か?」
その日の夜、ふみのは元気がなかった。
もしかして瑠火から何か聞かされたのだと
杏寿郎はなんとなく勘づいていた。
「そ、そう?…素振りの回数を増やして疲れちゃったかな…」
「母上のことも気にかけてくれて…。
家のこともしてくれて、ふみのには本当に感謝している。
いつもありがとう。今日はもう、早めに休んだ方がいい」
「瑠火様に早く元気になってほしい、ただそれだけよ。
ありがとう。今日はそうしようかな!」
にこっと笑うふみのだったが、
それは必死の笑顔だった。
皆に心配かけまいと、いつもふみのは笑う。
(いつもふみのは、周りを一番に気にかけてくれるが、
きっと無理をしている…)
杏寿郎は申し訳なさが込み上げた。
そして、母上のことも心配だ。
具合はどうなのか、何が起こっているのか。
しかし事実を知るのも、怖い。
(…俺はこれから、
どうしていけばいいのでしょうか、母上…)
自分に何ができるのか、どうやって生きていけばいいのか。
小さな少年の杏寿郎は、分からなくなっていた。
ただ、ただ瑠火の回復を、祈るばかりだった。
その日は槇寿郎の任務はなく、
連日に及んでいた任務だったため、
また瑠火のこともあり、数日の休暇をもらえたらしい。
「数日ほど休暇をもらった。
いつも瑠火のことを見ていてくれて、
家のことまで、すまない。
この休暇中は、俺が瑠火をみる」
杏寿郎達にそう言うと、槇寿郎は瑠火の部屋へと向かった。
「槇寿郎様、最近ずっとお戻りでなかったから
しばらくお休みできて、本当によかった」
ほっと安心するふみの。
それは杏寿郎も同じだった。
「ああ、父上も、母上との時間ができて
とても喜んでいると思う!」
「うん、絶対そうだとおもう!
さ!私達はお洗濯をしちゃいましょ!」
「うむ!承知した!」
瑠火の部屋に向かう槇寿郎の背中を見送り、
二人は千寿郎を連れて、洗濯物を干しに庭に出た。
今日の天気は雲ひとつない晴天だった。
洗濯物もよく乾きそうだ。
ふみのは、空を見上げて、願う。
(このまま時間が止まってしまえば、いいのに。
どうかずっとこのまま、
母上様が生きていられますように)