火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第4章 決意と別れ
「え…そんな、そんなことって……っ。
他の、他のお医者様を当たってはいかがですか?!
薬を変えたら、何か別の薬で、治るかもしれませんっ…!」
瑠火の言葉が理解できず、動揺するふみの。
(なんで、どうして瑠火様が、そんなっ…)
体が震えて、止まらない。
気づくと涙が溢れてきていた。
「ふみのさん、これはもう私の定めなのです。
変えられない運命なのです。
ですが、私は煉獄瑠火として生きた人生に、
悔いはありません」
瑠火の瞳は、今まで見た中で一番美しかった。
「槇寿郎さんと出会い、煉獄家に嫁ぎ、
杏寿郎と千寿郎が生まれ、
ふみのさんが家族に加わって…。
楽しく過ごした日々が私の宝物です。
どうか、これからもその優しい眼差しを忘れず、
自分を大切に、気持ちに素直に、生きて欲しいのです」
その時、はっと、みちの言葉を思い出す。
『自分の気持ちに素直に。
自分を大切にしてください』
「……っっ」
みちの言葉と、瑠火の言葉が重なる。
瑠火はふみのを、ぎゅっと抱き寄せた。
いつもの瑠火の、あたたかい手は、
頭をやさしく撫でてくれる。
「ふみのさん、あなたはもう、私の本当の娘です。
一緒に過ごしてくださって、本当に、本当にありがとう」
その言葉に涙が溢れて、止まらない。
瑠火の涙が、ふみのの額にぽたっと落ちた。
ふみのは瑠火の背中に手を回し、
優しく力を込めて抱きしめた。
そしてずっと言いたかった言葉を、瑠火に言う。
「私もです…っ、母上様……っ」
縁側から吹く、初夏の穏やかな風が二人を包み、
瑠火とふみのは、強く、強く抱きしめ合った。