火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第23章 思いは光の架け橋へ〈後編〉
もう床に就かなければと杏寿郎は思っていたが、
ふみのを目の前にすると傍を離れたくないと、
どうしても抑えが効かなくなってしまう。
杏寿郎のいつもより低く艶めいた声色が
ふみのの総身に響く。
ふみのは恥ずかしそうに、
躊躇いつつも返事を返した。
「…“もう少しだけ”じゃなくて…、
今夜は…杏寿郎と一緒にいたい…っ」
「…!」
じわじわと、
ふみのの頬が赤く染まる。
その姿に、
杏寿郎はふみのを
ぎゅっと腕の中へと閉じ込めた。
「…ああ、今夜は一緒に居よう」
「うん…っ!」
二人は敷かれた布団にごろんと寝転ぶと、
束の間の穏やかな時間を愉しんだ。
昔に戻ったような弾む気持ちと、
懐かしさで泣きたくなるような
やさしいぬくもりが溢れるひととき。
互いを知れば知るほど、
愛おしさで心が満たされていく。
「…!もうこんな時間か。
すまない、つい話し込んでしまった」
「! ごめんなさい、全然気が付かなくて…。
楽しい時間は、本当にあっという間ね」
「そうだな。今日はもう休もう。
…ふみのとゆっくり話しができて良かった」
「うん、私もよ。
杏寿郎、今日もありがとう。
おやすみなさい」
「ああ、お休み」
杏寿郎はふみのの前髪をかき分けると、
甘く小さな口づけをその額に落とした。
夜月が柔らかく照らす中、
この先の未来を夢見るように、
二人は眠りについた。
それから数日後のこと。
稽古をしていた二人の元に、
要と杲(ひので)が伝令を伝えにやってきた。
本部である産屋敷邸にて
柱合会議が行われるとの知らせだった。
ふみのは、
今の実力では柱として相応しく無いと思い、
参加を断ろうとしたが、
その会議にはふみのの名も
上がっているとのことだった。
杏寿郎も、何も心配は要らないと
ふみのを説得し二人は屋敷へと向かった。
屋敷に着くと既に何人かの柱がいた。
軽く挨拶を交わし、互いの近況を伝え合う。
義勇と小芭内は多くは語らず、
静かにその時を待っていた。
しのぶは、ふみのの
その後の容態を気にかけてくれた。
岩柱・悲鳴嶼行冥も久々の再会に
目を細めて静かに微笑んでいた。