火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第23章 思いは光の架け橋へ〈後編〉
「杏寿郎…!」
「煉獄さん」
「突然押しかけてすまない。
時透、具合はどうだ?」
「お陰様で回復に向かってます。
お忙しいのに、
わざわざ此方まですみません…」
それは良かったと、杏寿郎は
大きな掌を無一郎の頭にぽんぽんと乗せる。
それに照れながらも
嬉しそうに笑みを溢す無一郎。
「…正直、僕一人では限界かもって
思ったんですが、…」
「「…?」」
ぽつりぽつりと、
無一郎は記憶を辿るように呟いた。
「…僕が柱になったばかりの時、
煉獄さんが、“頑張ろう”って
言ってくれたことを思い出して…。
その言葉を胸に、刀を振り続けていました」
「…そうか。
少しでも、時透の力になれたのであれば俺も嬉しい。
だが、鬼を斬れたのは紛れも無く、
時透の努力の賜物だ」
「いえ、僕なんかまだまだです。
もっと…もっと頑張ります」
杏寿郎が無一郎の視線に合わせて腰を下ろし、
再びその頭を優しく撫でた。
その微笑ましい光景に、
ふみのは目頭が熱くなる。
血の繋がりはなくとも、
見つめ合う二人の姿は
本当の兄弟のようだった。
「…あ!」
「ふみの、どうした?」
何かを思いついたように、
ふみのは、ぽんと手を叩いた。
「時と…いえ、えと…、無一郎くん、
好きな…お料理はありますか?」
「…好きな、料理…?」
「はい!
快気祝いに、無一郎くんに
何かご馳走をしたくて…!」
「うむ!それは名案だな!」
時透の好みは何だ!と
杏寿郎がじっと無一郎を見つめた。
無一郎は暫く俯き考えると、
ぼそりと小さく呟いた。
「…ふ、ふろふき…大根、…です」
「成程!ふろふき大根か!」
「無一郎くんは大根がお好きなのですね!
そうしたら、もし此方に寄れそうな時、
ぜひご連絡くださいね」
「…ありがとう、ございます…。
でも、本当に…いいんですか…?」
「もちろんですっ!
無一郎のご連絡、お待ちしていますね」
ふみのの笑みに、
無一郎も嬉しそうに頬を赤らめていた。
…!
…笑うとますます、
健一郎そっくりだわ…っ
今まで無一郎の感情が殆ど汲み取れなかったが、
少年らしくも時折見せるあどけなさに、
ふみのはやはり、弟の健一郎と
重ね合わせてしまうのだった。