火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第23章 思いは光の架け橋へ〈後編〉
ふみのは椅子に腰掛けると、
二人の間にしばし沈黙が流れた。
すると、無一郎が口を開いた。
「…忘れていた大切なことを、
思い出すことができて」
「…? 大切なこと…、ですか?」
「うん。
…家族のこと、兄のこと、
あまね様に、助けて頂いたこと」
ぽつぽつと思い出すように話す無一郎を見て、
その言葉の奥にはどんな想いがあるのだろうと
ふみのは静かに耳を傾けていた。
「…ふみのさんは、」
「! は、はい!」
「どうして…鬼殺隊に入ったの?」
「…え、えと…」
透き通った瞳にじっと見つめられ、
ふみのはふと、弟の健一郎を思い出し、
その姿を重ね合わせてしまう。
「…家族を、鬼に殺されて…。
この哀しみを繰り返さないためにも、
何か少しでも、役に立ちたいと思い、
入隊を…決意しました」
「…ふみのさんも、
家族を…失ってるんだね」
「…はい。一族の皆と、
…父と母、あと…妹と弟を」
家族のことを思い出すたびに
ふみのの目頭が熱くなる。
どんなに時が過ぎようと、
その哀しみはいつもふみのの胸を締め付けた。
「僕も、…家族を失って。
あまね様に助けてもらって、
…気付けば毎日必死に、
鍛錬し続けてた」
「…!
と、時透くんも、ご家族を…?」
「うん、…双子の兄を。
でも、ふみのさんは凄いね。
…腕を負傷してしまったのに、
任務も再開できてるし」
「いえっ、全然です…!
まだまだ皆さんの足を
引っ張ってばかりです…」
「…それと、」
「?」
「敬語も、全く直ってないし」
「!! …っそ、それは!
私の方が後から入隊した身ですし!
“時透くん”と
お呼びするのも痴がましいのに…っ」
「でも僕は、ふみのさんより年下なのに
名前で呼んでるよ」
「それは全く!構いません!」
「…それじゃあ、平等にってことで、
お互い名前で呼び合うのは…どう?」
「…っえ!?
と、時透くんを、ですか?!」
「そう」
「そんな!とんでもないです!
で、できませんっ!!」
トントン…────
「時透、失礼する!」
「「 ! 」」
はいと、無一郎が返事をすると、
しのぶと話しを終えた杏寿郎がやってきた。