火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第1章 本家と分家
翌朝。
約束通り、ふみのはよしのと健一郎は
屋敷の中で隠れんぼをしていた。
「私が鬼になるから、よしのと健一郎は隠れてね!」
「絶対に見つからないところに隠れるんだ〜!」
「…ひとりでかくれるのこわいな…。
よしのねえさまいっしょにかくれよう?」
「何言ってるの!
そんなことしたら二人一緒に見つかっちゃうじゃない!
屋敷にはたくさん人がいるんだから大丈夫よ!」
きらきらと瞳を輝かせ意気込むよしのに対し、
びくびく怯えている涙目の健一郎。
「健一郎、大丈夫よ。
ねえさまが必ず健一郎を見つけるから!」
笑顔で頭を撫でると、健一郎は少し笑った。
「…うん!ぼくいっしょうけんめいかくれるよ!」
うん!その調子!とふみのは健一郎の背中を押した。
「よし!今から30数えて、二人を探すね!
じゃあ数えまーす!」
そう言うとふみのは壁に手をつき、数え始めた。
二人の足音がぱたぱたと遠くなる。
「…28、29、30!」
くるりと後ろを向くと、しーんと静まりかえっていた。
よし!と意気込むふみのは二人を探し始めた。
(…見つからない。
前までは、押し入れの中や庭の岩の影にいたりと
分かりやすく隠れていたのに)
二人も大きくなったんだなあと
しみじみしていると襖の隙間に健一郎の着物がはみ出ていた。
思わずくすっと笑ってしまうふみのは、
健一郎を驚かしては可哀想だと思い、
わざと聞こえるように話した。
「あれれ、見たことがある着物が見えるなあ!
これは誰のだったかしら…!」
その声に、襖からはみ出た着物がびくっと動いた。
可愛らしい健一郎の反応に、ふみのは
もう抱きしめたくてたまらなかった。
そうっと襖を開けると、眉が下がり今にも泣き出しそうな
垂れ目が可愛い健一郎がいた。
「みーつけた!」
笑顔で言うと、健一郎はふみのに抱きついてきた。
「もうずっと、このままかと、おもいました」
健一郎の頬を伝う涙を両手で拭うと
安心したようにふみのを見上げた。
「言ったでしょう?ねえさまが必ず見つけるって!」
「うん、あんしん、しました。
みつけてくれてありがとうございます。ふみのねえさま」
「さ!よしのを探そう!よしのは手強いぞ〜!」