火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第23章 思いは光の架け橋へ〈後編〉
するとその少年の動きがびくっと止まり、
目だけをふみのにそうっと向けた。
「と、突然呼び止めたりしてごめんなさい。
竈門炭治郎くんの病室をご存知ですか…?」
その少年はふみのの顔を見た途端に、
少しずつ赤面し始めた。
「…こっ、ここの、病室、です…っ」
少年は自分が出てきた部屋をすっと指差した。
「! そうなんですね!
教えてくださって
ありがとうございます!」
「い、いえ…!」
少年の顔が更に赤くなる。
ふみのはどこかで見たことのある容姿に、
その顔をじっと見つめた。
…風柱様の…、
不死川さんに
どこか似ているような…
風柱・不死川実弥とふみのは、
柱合会議にて一度会ったきりだったが、
その少年の目元は、実弥ととても良く似ていた。
「で、ではっ、し、失礼します!!」
少年はさっと会釈をすると
早歩きでその場を立ち去ってしまった。
「…私、何か気に障るようなことを
言ってしまったかしら…?」
「いや、そうではないだろう。
何か急ぎの用があったのやもしれんな。
…不死川に、とても似ていたが…、
確か以前、何かで話した際には、
兄弟はいないと言っていたような気もしてな…」
はて、と顎に手を当て首を傾げる杏寿郎。
「! 私もね、風柱様に似ているなって思ったの!
…でも、ご兄弟はいらっしゃらないのね…」
ふみのと杏寿郎は顔を合わせると、
その少年の行った先を見つめた。
「…ふみの?」
すると二人の背後から、
可愛らしい少女の声が聞こえてきた。
ふみのと杏寿郎はくるりと振り返ると、
そこにいたのは以前よりも背が伸び、
一回り大きくなった禰󠄀豆子が立っていたのだ。
「…!! 禰󠄀豆子ちゃん…っ!?」
「!! 禰󠄀豆子!話せるようになったのか!?」
禰󠄀豆子は二人と目が合うと
嬉しそうに駆け寄ってきた。
「ね、ずこ、おはなし、するねぇ!
ふみの、きょうじゅ、ろ、いっしょねぇ!」
にこにこと屈託なく笑う禰󠄀豆子を
ふみのは目一杯抱きしめた。
「良かった…!
禰󠄀豆子ちゃん、本当に良かったね…っ!」
嬉しさのあまり、
ふみのは涙を流した。
杏寿郎も、禰󠄀豆子の頭を
ぽんぽんとやさしく撫でた。