火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第23章 思いは光の架け橋へ〈後編〉
「…私、この帯金様が創って下さった日輪刀で
絶対に、この世界を救いたい。
皆が笑って暮らせる毎日を、
必ず、取り戻したい…っ」
杏寿郎は、その場にしゃがみ込み
静かに涙を流すふみのを
泣き止むまで抱きしめ続けた。
ふみのは鬼を憎もうと思うも、
そうはできなかった。
それを日輪刀が、
光の呼吸は望んでいないと、
知っていたからだ。
そしてふみのは思う。
憎悪は、憎悪しか生み出さないということを。
鬼を心の底から憎み恨んでも、
失われた命は戻ってくることは決してないのだ。
そしてどんなに辛い時でも、
前に進まなければならない。
大切なものが悉く奪われ、
鬼の猛威は日に日に増していくばかりだ。
負ってしまった傷跡は、
永遠に消えることはない。
その残虐さは人を深い哀しみに陥れ、
日々の幸せをも奪い去ってゆく。
でも、泣いてばかりはいられない。
どんなに打ちのめされようとも、
前を向き、この試練に
立ち向かっていくしかないのだ。
「ふみの」
「…ん?」
ふみのの耳元に、
杏寿郎の声がやさしく響いた。
「俺は、どんな時もふみのの傍にいる」
頭を撫でてくれるあたたかい手のひら。
杏寿郎はそれ以上、何も言わず、
ただふみのをぎゅっと抱きしめた。
このやさしいぬくもりに、
そして全てを包み込んでくれる
杏寿郎のあたたかい心に、
何度救われただろう。
「杏寿郎、いつもありがとう」
ふみのは小さく微笑んだ。
少しずつでいい。
今自分ができる、最大限のことを。
『希を 切り拓く』
心に刻まれたこの言葉が
ふみのの闘志を再び灯した。
それから数日経った日の事。
里から帰還した炭治郎達の見舞いに、
ふみのと杏寿郎は蝶屋敷へと駆けつけた。
しのぶに案内され、病室に向かうと
そこには蜜璃とその横に
蛇柱・伊黒小芭内がいた。
蜜璃はふみのと杏寿郎を見た途端、
声を上げて泣き出してしまった。
「う、うわ〜〜〜〜んっっ!!!
ふみのさんと
煉獄さんだぁ〜〜〜っ!!!」
「み、蜜璃ちゃん!
ちゃんと横になって寝ていなくちゃ!」
「甘露寺!!
安静にしてないと治るものも治らないぞ!」