火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第23章 思いは光の架け橋へ〈後編〉
それから一月(ひとつき)ほど経った頃だった。
刀鍛冶の里に上弦の鬼による襲撃があったことを
ふみの達はその翌朝に要を通じて知った。
そこに現れた鬼────
上弦の肆・半天狗と上弦の伍・玉壺。
その鬼ニ体は、
日輪刀を打ち直しに向かっていた炭治郎と禰󠄀豆子、
恋柱・甘露寺蜜璃、霞柱・時透無一郎、
そして岩柱の弟子として
師事している不死川玄弥により討伐を成し遂げた。
里の被害は炭治郎達の死闘の末、
最小限に止めることができたが、
数名の死傷者も出てしまった。
その中にはふみのの刀鍛冶である
帯金庄衛もあった。
里の子ども達を庇い、
惜しくも帰らぬ人となってしまった。
ふみのは庄衛からの
文の返事が来ないことを気にかけていた。
要から上弦の襲来について聞かされた時、
ふみのは一番に庄衛の安否を尋ねた。
要は言いにくそうに、その事実を告げると
ふみのはその場に静かに泣き崩れた。
すると後からやってきた杲(ひので)が連れてきたのは、
庄衛の鴉・作(つぐる)だった。
作も庄衛の死を酷く哀しんでいた。
作は、庄衛がふみの宛てに綴っていた
文を届けようと煉獄家へとやってきてくれたのだ。
そこには、刀に浮き出た文字については初耳だということと、
詳しい資料や情報が無く、
助言ができずに申し訳ないと
詫びの言葉が添えられていた。
「…ふみの。
帯金殿の文には、何と…?」
「…現時点では何も詳細は分からない…、
また何か分かり次第、文を出すって…」
「…そうか」
杏寿郎は涙を流すふみのの肩に
そっと手を掛けた。
「作さん、手紙を届けてくれてありがとう。
帯金様は本当にご立派な方だわ…っ。
…落ち着いたら、帯金様のところに
ご挨拶にお伺いしても、いいかしら」
「ハイ、勿論デス。
キット庄衛モ、ふみの殿ニ会エルノヲ
心待チニシテイルハズデス…!」
「うん…!
里の皆さんにもよろしくお伝えくださいね」
「ハイ。承知致シマシタ。ソレデハ」
作は、小さく頭を下げると、
東の空へと高く羽ばたいていった。
「…ふみの」
杏寿郎はまだ頬に涙が残るふみのの背中を摩った。