火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
「…杏寿郎?」
「ん?どうした?」
ふみのは杏寿郎を見上げた。
「昨日、鬼を斬った後に、
日輪刀に不思議なことが起きたの」
「不思議なこと?」
「うん、日輪刀の刃(は)の表面に、
文字のようなものが、見えた気がしたの」
「文字…?」
「うん…でもすぐに消えてしまって。
文字のようなものが光りを纏いながら、
刀に刻まれたように見えて…」
「うむ…、
以前にも同様なことはあったか?」
「ううん、こんなこと初めて…。
…これは私の勝手な思いつきなのだけど、
光の呼吸は、何かを伝えようと
しているのかなって、思ったの」
「…成程。その可能性は大いに考えられるな。
何かを発しようとしているのやもしれん。
でも一体、何と書かれていたのだろうか…」
「……。……!!!
もしかして…っ!!」
ふみのは何かを思い出したように
はっと目を見開いた。
「以前、槇寿郎様からお借りした
光の呼吸について書かれた本に載っていた型…、
最後の型だけが、汚れで見えなくなっていたの…!」
「…! もしや、その型の名が
刃に現れたということか…?!」
「うん…。もしかしたら、
そうなんじゃないかなって、今ふと思い出して…。
私、明らかになっていない型のことも併せて
帯金様に文を書いてみるわ!」
「うむ。それがいい。
何か手掛かりが掴めるやもしれん」
「うん!」
二人は起床し、着替えを済ますと、
ふみのはこのことを文に綴り帯金庄衛へと送った。
しかしその返事は、
ふみのの元に戻ってくることはなかった。
そして、空が茜色に染まり始めた頃、
槇寿郎と千寿郎が帰宅した。
「杏寿郎、ふみのさん、今戻った」
「兄上、ふみのお姉様…!
遅くまですみませんでした…っ」
「父上!千寿郎!お帰りなさい!」
ふみのは杏寿郎と一緒に、
玄関で二人を出迎えた。
槇寿郎が持つ買い物籠には
沢山の食材が詰み込まれており、
千寿郎は一冊の本を大切そうに抱えていた。
俺が荷物を持ちます!と杏寿郎が言うと、
槇寿郎は、ありがとうとそれを手渡した。
「千寿郎くん、本屋さんに行ってきたの?」
「はい!ずっと欲しかった本があって…、
父上が買って下さったんです!」