火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
「ふみのの気持ちも汲み取れず、
すまなかった。
気を遣わせてしまったな…」
己の不甲斐なさに、
杏寿郎はぐっと奥歯を噛む。
「ううん!杏寿郎は何も!
私が勝手に色々と考えてしまっただけで…!
…皆にね、
もう大丈夫なんだよって、安心して欲しくて、
少し意地になっちゃったのかもしれないわ…っ」
ふみのは自分の言動を思い出し、
困ったように笑った。
「なんだか…ごめんね。
だめだなぁ、私は。
いつも杏寿郎に、迷惑をかけちゃうね…」
大好きな人に心配など掛けたくないのに
かえってその原因を
自分が増やしてしまっているのではないかと
ふみのは杏寿郎に掛ける言葉に
詰まってしまった。
笑ってて欲しいのに
杏寿郎の笑顔が
大好きなのに
私は 困らせてばかりだ…
ふみのがしょんぼりと俯く。
「…ふみの」
「…?
……ひゃっ!」
突然、ふわっとした感触が背中に当たった。
杏寿郎の口唇が、
なめらかなふみのの膚を延う。
「きょ、杏寿郎…っ!
もう…っ、くすぐったいったら…っ!」
杏寿郎はふみのの肩やうなじに唇を寄せる。
ふみのは声を抑え、
それ以上着物が落ちないよう、
必死に手で押さえつけた。
杏寿郎からのやさしい愛撫が
何度も、何度も、華奢な背中を行き来した。
「…すまない、」
暫くして、杏寿郎の唇が静かに離れた。
杏寿郎は一言そう言うと、
ふみのの着物を肩まで上げ、
後ろから、ぎゅうっと抱きしめてくれた。
杏寿郎の逞しい腕がふみのの胸元で交差する。
「…愛おしい人が目の前にいると、
どうも抑えが効かなくなってしまう」
「…っ!」
杏寿郎の熱を含んだ声色に、
ふみのの総身が疼き始めていく。
「夜通しで疲れたろう。
少し眠ろう」
「きょ、杏寿郎っ…!あのっ、」
ふみのは杏寿郎の腕を
きゅっと両手で掴むと、
ゆっくりと後ろへと顔を向けた。
二人の視線が交わる。
既に二人の吐息が熱を帯びていた。
何か言いたげなふみのの潤む瞳に
杏寿郎は釘付けになった。
「…まだ…、
寝たくないって…言ったら…?」
「…!」