火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
「ふみの?」
「!! は、はいっ!」
杏寿郎の声に、ふみのは
はっと我に返った。
杏寿郎は襖を開け、
ふみのに目を向けると、
その目がびくりと開かれた。
「!!! ふみの!!!
す、すまないっ!!!」
「…? !!! ひゃっっっ!!!」
ふみのは、湿布を貼りかけていたことを失念しており、
右肩から腕までが見事に露出していたのだ。
杏寿郎は顔を赤らめ、咄嗟に目線を逸らした。
「ご、ごめんなさいっ!!」
「いや!!ふみのが謝ることはない!!
確認をしなかった俺が悪い!!」
ふみのはさっと着物を纏うと、
真っ赤になった顔を杏寿郎にそうっと向けた。
杏寿郎もどうしていいのかと戸惑い、
目の遣り場に焦り困っていた。
「も、もう、大丈夫です…!
返事をしたのに、
こんな格好で失礼しました…っ」
「う、うむ! ……!!」
杏寿郎はふみのの座る足元に置かれた
しのぶからの湿布薬に目を見開いた。
「ふみの…!?
やはり腕を痛めていたのか?!」
ざっと勢いよく、
杏寿郎はふみのの前に腰を下ろした。
「あ、これは!ち、違うの!
全然、全く、痛くなくて…!
でも、しのぶさんが処方して下さったから、
大事をとって、貼っておこうかなって…!」
「そうか、…本当に痛みはないんだな?」
「うん、大丈夫よ!
紛らわしいことをしてごめんなさい…」
杏寿郎はほっとすると、
ふみのの隣に腰掛けた。
「…俺が貼っても、構わないか?」
「…!! あ、ありがとう…っ。
お願い、します…!」
ふみのは恥ずかしさで頬が熱く火照る。
杏寿郎に背を向け、髪をさっと左肩に纏めると、
着物を緩めて、するりと右肩をみせた。
杏寿郎の手が背中や腕を掠める。
そのあたたかい手が触れるたびに、
ふみのの心臓がどきんと跳ねた。
「…杏寿郎、さっきは…ごめんね」
「? 何のことだ?」
ふみのは躊躇いつつも、話しを続けた。
「杏寿郎が槇寿郎様にお話していたのに、
遮っちゃったから…。
…でも、槇寿郎様にも千寿郎くんにも、
これ以上心配をかけたくなくて…」
俯くふみのの肩がぐっと強張った。