火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
「そうしたら、
食材をいくつか切らせてしまっているので
買い物に行ってきます!」
何か美味しいお茶菓子も見つけてきます!と
千寿郎が三人に話しかけた。
「千寿郎くん、私も一緒に行くね!」
「! ふみのお姉様は
今日はゆっくりお休みになってください。
俺一人で大丈夫です!」
でも、とふみのが言おうとすると、
槇寿郎がぽんとふみのの肩に手を置いた。
「買い物は、俺と千寿郎とで行く。
ふみのさんと杏寿郎は家で休んでいなさい」
「槇寿郎様…っ」
「父上…!よ、宜しいのですか…?」
千寿郎が申し訳なさそうに、槇寿郎に訊く。
「ああ。…いつも皆に
任せっきりにしてすまなかった。
ふみのさん、杏寿郎。
湯の用意もしてある。
ゆっくり浸かって疲れを取るといい」
槇寿郎が穏やかに笑う。
その眼差しは“父親”そのものだった。
「父上、お気遣い頂き、
ありがとうございます。
お言葉に甘えて…そうさせて頂きます」
「槇寿郎様、ありがとうございます。
今日は千寿郎くんと
ゆっくりお過ごしになってきてください」
「ありがとう。
では、こちらもお言葉に甘えて」
「父上…!兄上もふみのお姉様も
ありがとうございます…っ!」
千寿郎は買い物籠を取ってくると、
嬉しそうに槇寿郎と街へと出かけていった。
楽し気に会話をしながら歩くその後ろ姿に、
ふみのと杏寿郎に笑みが溢れた。
二人は湯浴みを済ませ、
ふみのは自室で髪を乾かし終えると、
しのぶから貰った湿布薬を取り出した。
腕の痛みはなかったが、念の為にと思い、
ふみのは襦袢と着物を緩め、
右肩に湿布を貼った。
…あの時
刀に浮き出たのは 文字なのかな…
そうだとしたら
何が…書かれていたのかしら…
ふみのはふと、
鬼を斬った後に刀の表面に表れた
文字のことを思い出していた。
刀掛けに置いた日輪刀を見つめるも、
特に変わった様子は見受けられなかった。
何かを訴えようとするように
何度も唸った日輪刀の感触が
今でもふみのの手に残る。
…希(まれ)を 込める…
光の呼吸には
一体何が隠されているの…?
ふみのはただじっと、
日輪刀を見つめた。