火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
「お待たせしてごめんなさい。
隊士の皆を探さなくちゃ…っ」
「ああ、この先を進んでみよう」
「ふみのーッ!!杏寿郎ーッ!!」
「! 杲さん!!」
そこに勢いよく飛んできたのは、
ふみのの鴉・杲(ひので)だった。
「隊士ヲ発見!全員軽症!
要ガ隠ヘ伝エ、間モ無ク到着トノ事!」
「そう…!良かったわ…!
杲さん、ありがとう」
「杲、助かった!感謝する!」
杲は二人に褒められ、
ほわほわと嬉しそうに
ふみのの肩に留まった。
「あ、杏寿郎、
このまま、少しだけじっとしてて…?」
「ん?」
ふみのは日輪刀を腰に戻すと、
持っていた小さな巾着袋の中から
手拭いを取り出し、杏寿郎の額にそっと当てた。
「…大丈夫?痛くない?」
「ああ。すまない、ありがとう」
止血できたかな?と
ふみのは薬液が染みた綿紗で
その傷口をそっと消毒した。
「ふみの、腕は…?
痛みが、あったのではないか?」
「うん、でも少しだけ。
急に動かしちゃったからかな!
でもほら、もう平気!」
ふみのは杏寿郎の前で
右腕を上下に動かしてみせた。
すると、杏寿郎はふみのの手を引くと、
自分の方へと引き寄せ、
ぎゅっと強く抱きしめた。
「…!! 杏…寿郎…?」
杏寿郎はふみのの肩に顔を埋めると、
さらに腕に力を込めた。
突然のことに、ふみのは戸惑いを隠せない。
「…杏寿…っ」
「ふみのに…、
何かあったらどうしようかと
気が気でなかった…っ」
杏寿郎の震える声に、
ふみのもその背中に腕を回した。
「…命令を無視してごめんなさい。
でも、杏寿郎を置いていくなんて
できなくて」
しばし二人の間に沈黙が流れた。
「……杏寿郎…?」
ふみのはそっと杏寿郎に呼びかける。
杏寿郎はふみのを守りきれなかったことに
不甲斐なさを感じるも
以前と同じように刀を振るうその姿に
安堵の気持ちも込み上げていた。
とくとくと、
二人の鼓動が身体に響き合う。
杏寿郎はふみのの香りとぬくもりに浸った。
「帰ったら、直ぐに蝶屋敷で診てもらおう」
杏寿郎は最後にぎゅっと抱きしめると、
ふみのの瞳を見つめた。