第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉

「私は…、貴方を救いたい…っ！」

「…ハァ？何言ってんの？
　本当、アンタも馬っ鹿じゃないの？！」

「ふみの！！
　もう此処から立ち去…っっ」

杏寿郎の体に巻きつく腕が、
その口を塞いだ。


「…ったく、何奴も此奴も
　ごちゃごちゃ煩いわねぇ…！！
　さっさとけりを付けてやるわ！！

　血鬼術　六角呪（ロッカクジュ）！！」


鬼が両腕を大きく振ると、
腕の突起から夥しい数の蜂が
ふみのを目掛けて飛び散った。


（！！　数が多い…！！
　でも、斬るしかない！！）


ふみのは大きく息を吸い、
意識を集中させた。



「───光の呼吸　参ノ型

　幻明無垢…！！」



ふみのの刃から眩い光が帯状に放たれ、
蜂の姿は一瞬にして消え失せた。

「…っ？！　あの数を一瞬で…！？」

鬼がじりっとたじろぐ。

ふみのはその隙に、
杏寿郎に絡まる腕を斬り払い、
鬼の眼前に詰め寄った。

「…っこの糞女！！
　血鬼術　蜂乱…」



　ザンッ───…



「グ、ァ…ッ」

鬼の声を掻き切るように
ふみのの刃がその頸に差し込まれた。


「貴方は、こんなことをする為に
　生きてるんじゃないわ…！！」


「…！！」


「…光の呼吸　肆ノ型

　煌陽の暁───」


ふみのの刃が光り輝き、
滑るように鬼の頸を刎ねた。


「…ア　タシの、頸　が…っ！！」


鬼の頭部が斬り落とされ、
地面にごろりと転がり、
体もその後を追ってばたりと倒れた。


　ドクン───────…


（…！？）

ふみのの刀が再び唸る。
刃に目を向け、ふみのは驚愕した。


（…刀に、文字が…？！）


刃の表面に彫られた“悪鬼滅殺”の文字の上に
薄らとだが、何かが浮かび上がったように見えたのだ。


（これは…何…？！）


ふみのはその文字を読み取ろうとしたが、
それは瞬く間に消えてしまった。


「ふみの！！」


杏寿郎がふみのに駆け寄る。

「杏寿郎…！
　！　大変…っ！
　額から出血しているわ…っ」

「俺のことは案ずるな。
　それよりもふみのの腕を
　一刻も早く診てもらわなければ…っ」

「ありがとう。
　…でも、少しだけ
　時間をもらってもいい…？」

「…？」