火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
(…お願いっ、動いて…っ!!)
ふみのは柄を更に握り締め、
体を後ろに捻りながら刀を振るった。
「光の呼吸 壱ノ型 翠光──…!!」
ふみのの放った眩い閃光が、
鬼の体をビキビキと音を立てながら
その皮膚を切り裂いた。
痺れるような波動を受け、
鬼は後ろに後退りするも、
瞬く間にその傷を再生させた。
「クソッ…!!
女のくせに、何なの…っ!?
目障りだからとっとと消えてよ!!!
…──血鬼術 蜂牙(ホウガ)!!」
それを合図に地面が地響きを立てながら、
鬼の腕に生えた突起と同じ形状をしたものが
地面から勢いよく伸び、
二人の足元へと攻め込んできた。
「ふみの、来るぞ!!」
「うん!!」
二人は息を揃えて、刀を振り下ろした。
「炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり!!」
「光の呼吸 参ノ型 幻明無垢!!」
ふみのと杏寿郎の光と炎が
渦を巻くように混じり合い、
風を巻き上げながら、
地面を根こそぎ剥ぎ取っていく。
そのうねりは鬼へと攻め寄ると、
あまりの勢いにその場に倒れ込んだ。
(今だ…っ!!)
杏寿郎が目に見えぬ速度で、
鬼へと詰め寄り、刀を振り上げた。
「炎の呼吸 壱ノ…っ」
「お願いっ…!!!!!
アタシを殺さないで…っ!!!!!」
「「!!??」」
杏寿郎が刀を振り下ろす瞬間、
鬼は杏寿郎へ土下座をして頭を下げたのだ。
杏寿郎は直前で動きを止め、
静かに刀を下ろした。
鬼はふるふると肩を震わせ、
嗚咽を零していた。
怖気付く様子に、先程と同じ鬼なのかと
杏寿郎は眉を顰めた。
ゆっくりとその鬼に近寄るも、
距離を取って、その足を止めた。
「…俺は鬼狩りだ。
お前の頸を斬らねばならない」
「…そうよね。知ってるわ。
…アタシがこの世に
生きてちゃいけないってこともね。
人間でいても、鬼でいても、
アタシは役立たず。
…何の意味のない存在なのよ」
鬼は顔を上げ、杏寿郎を見つめた。
妖艶なその泣き顔は、
人間の面影さえも感じさせた。
「でも…そうね。
貴方になら…殺されてもいいかも。
ねぇ、鬼狩りさん…、
アタシを痛くないように、殺して…?」
杏寿郎はそのまま無言で鬼に近づくと、
その頸に刃先をそっと当てた。