火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
「…へぇ、やるじゃない」
その鬼はにたりと笑うと、
ぎろりと二人を睨ねつけた。
「…そういうこと」
鬼は、何かを悟ったように微笑した。
「アンタ達、“そういう”関係なんだぁ?」
「「!?」」
鬼の不可解な言動に、
二人は日輪刀の柄を更にきつく握った。
「隊士達を…どこへ攫ったの?!」
ふみのは鬼の問いかけを無視し、
食いるように鬼を睨んだ。
「タイシ?…あぁ、此処に来た
間抜けな男達のこと?
大丈夫。安心して?
後でちゃあんと
骨一本残さず綺麗に食べてあげるから。
…それとアタシ、女の血には興味ないの」
「…お前の狙いは、一体何だ」
杏寿郎が唸るように、鬼に問う。
「嬉しい、聞いてくれるのねぇ。
アタシは男の血が好みなの。
女の腐った汚らわしい血に興味なんてないわ。
…寧ろ目障りなくらい。
…さっさと死んでくれない?」
鬼から突如発せられる唯らなぬ圧に
ふみのは吐気が込み上げた。
(ぐっ…、何なの、この空気は…っ!)
ぐらりとふみのの視界が歪んだ。
「ふふっ、笑えるわ!弱すぎ…!
アンタを始末してから、
その愛おしく想う男を喰ってやるわ!!」
ふみのが一瞬怯んだ隙に
鬼が一気に狙いを定め、攻めて立てた。
「ふみの!!」
杏寿郎はふみのの前に立ち、
日輪刀を振りかざした。
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!!!」
鬼は杏寿郎からの炎を避け、
宙を舞いながら、地面に着地した。
「…そっか、貴方…柱なのね。
どうりで他の男とは違う筈だわ。
いいわねぇ。
…強くて、逞しくて、…愛する女もいて。
さぞかし羨ましいわ。
…癪に触る程にねぇ!!!」
鬼は声を荒げると、
肩から手の先にかけて
鋭い角が幾つも出現した。
「…滑稽だわ。誰かを想うなんて。
愛なんてただの見せかけよ。
己の欲求を都合良く埋めるだけの不純なモノ。
ああっ、反吐が出る!胸糞悪い!!
アンタ達二人共死んでもらうわ!!」
鬼は姿を眩ますと、
ふみのの背後から突如攻め込んできた。
「ふみの!!伏せろ!!」
杏寿郎も必死に刀を鬼に向けるも、
鬼の爪が先に、ふみのの首筋目掛けて
勢いよく降り落とされた。