火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
「まだ完全ではないけれど…、
また、杏寿郎の手を握れて嬉しい」
幸せそうに照れながら笑うふみのに
杏寿郎にも笑みが溢れた。
ふみのはその指先を
ゆっくりと絡めてゆく。
杏寿郎もふみのの細い指先に目を細め、
やさしく握り返した。
杏寿郎の瞳が小さく揺らいだ。
ふみのの腕が少しずつでも、
回復している事が、心の底から嬉しかったのだ。
杏寿郎は思わず声が詰まってしまい、
繋がれた手をじっと見つめていた。
「杏寿郎が傍にいてくれたから、
ここまでこれたの。
本当に、ありがとう。
次、手を繋ぐ時はね、
自分から杏寿郎の手を
握りたいなって思って…」
互いの手のあたたかさが
二人の心にもじんわりと伝わってくる。
「俺は…ふみのの手を離さない。
絶対にだ」
紅く燃ゆる瞳に、
ふみのは釘付けになる。
嬉しそう微笑むふみのに
杏寿郎の目尻が下がった。
「さぁ、帰ろう」
杏寿郎はふみのの手をそっと引く。
伝わり合うぬくもりに、ふみのの瞳が潤んだ。
希望を 絶やしてしまえば
哀しくも 全ての色を失ってしまう
でも 諦めずに思い続ければ
その努力は 必ず実を結ぶのだ
ふみのは 握られた右手を見てそう思った。
「杏寿郎?」
「ん?どうした?」
「帰ったら、
今日もまた稽古をお願いしてもいいですか?」
「ああ、勿論だ!」
少しずつ回復しつつある自分の身体に
ふみのも闘志を燃やしていた。
また日輪刀を握れるように
できることを 少しづつ
その日、ふみのと杏寿郎は
日が暮れるまで、鍛錬を行った。
その夜の事。
「伝令!伝令…ッ!
杏寿郎様!伝令デゴザイマス!」
「! 何事だ」
要が慌ただしく、
杏寿郎の部屋に飛び込んできた。
「北西ノ方向二、鬼ノ目撃情報ガアリ、
既ニ向カッタ隊士ハ、負傷シテイルトノコト…!」
「他には誰か向かっているのか」
「イエ…、人員ガ足リズ…。
杏寿郎様ヲ、オ呼ビ立テシテシマッタノデス…」
「成程。すぐに支度をする」
杏寿郎は隊服に身を包み、羽織を纏うと、
腰に日輪刀を差した。