火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
炭治郎は既に闘志に漲っており、
瞳からその熱意が伝わってくるようだった。
「竈門少年、長居をしてすまなかった。
黄色い少年と猪頭少年にも宜しく伝えてくれ」
「炭治郎くん、ゆっくり休んでね。お大事にね」
「はい…!煉獄さん、ふみのさん!
今日は本当にありがとうございました…!」
炭治郎が寝台からにこりと笑う。
二人は炭治郎の病室を後にした。
その帰り道の事。
「炭治郎くん、
意識が戻って本当に良かったわ」
「ああ。機能回復訓練も受ければ、
体力も徐々に回復していくだろう」
ふみのは、はっと杏寿郎を見た。
「そうだ、杏寿郎。
炭治郎くんに、
継子の話しをしていたの?」
「ああ、列車での任務の時にな。
その際、竈門少年から“ヒノカミ神楽”という
舞のことを尋ねられた。
それについて俺は初耳だったので、
先日、父上にも尋ねてみたところ、
恐らくそれは“始まりの呼吸”…、
日の呼吸と何か関係があるのではないかとのことだった。
それも含めて少しでも、
竈門少年の役に立てればと思ってな」
「ヒノカミ神楽…、私も初めて聞いたわ。
それは舞と呼吸が合わさって
技を成しているってことなのかしら…」
「それも考えられるな。
竈門少年の家に古くから伝わるものとなると、
歴史ある日の呼吸とも
何か繋がりがあるのやもしれん」
杏寿郎とふみのは、
呼吸というものが、単に技を成すためにだけに
在るものではないと思案した。
「皆、本当に凄いわ。
どんどん成長していて」
「うむ。
俺ももっと剣技の精度を高めればならんな」
「私も右の握力が更に戻るように
今まで以上に頑張るわ!」
にこっと笑顔を見せるふみのに
杏寿郎はやさしく微笑んだ。
「…これを言うと
ふみのに怒られてしまいそうだが、
無理だけはするな。
俺は全力でふみのを支える」
「うん…!ありがとう!
あ、そうだ!
杏寿郎、手を…出してもらってもいい…?」
「? こうか?」
杏寿郎は言われるがまま、
ふみのの前に左手を差し出した。
ふみのは辺りを見回して
人気がないことを確認すると
恥ずかしそうにしながらも、
自分の右手を杏寿郎の手に乗せ、
そっと柔く握った。