火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第4章 決意と別れ
そして、ある日、
ふみのの口から思いもよらないことを言われた。
「私も、木刀を握って一緒に稽古をやってみたい」
杏寿郎は聞き間違えたかと思い、
何度も確認したが、ふみのは本気だった。
「俺がいつも勝手に話をしてしまっているだけだ!
そこまで気にする必要はない!」
きっと自分に合わせてるのだろうと杏寿郎は思った。
「ううん。私は、杏寿郎みたいに、強くなりたい。
そして、大切な人たちを、守っていきたいの」
そう言うふみのは、
今までとは違って見えた。
自分の力で、生きていこうとする
強い意志が伝わってきた。
(もう、誰も、失いたくない)
心の底にから沸き上がってくる
使命のようなものをふみのは感じ取っていた。
そしてその日を境に、
ふみのは杏寿郎達に並び、
毎日木刀を握り、ひたすら鍛錬に打ち込んだ。
健蔵の血を引いているからなのか、
木刀を振るうふみのの姿は、初心者にもかかわらず、
美しく、整っていた。
槇寿郎の指導にも必死でついてきた。
時折、稽古中に見せるふみのの苦しそうな姿に
本当は無理をしているのではないかと杏寿郎は心配にもなったが、
少しずつ体力をつけていき、長時間の素振りにも
耐えられるようになっていった。
(絶対に、私は強くなる…っ!
槇寿郎に救っていただいた命を
私は絶対に強く生き抜いてみせる!)
そう思うふみのの志は、
槇寿郎の意思を継ぐかのように、熱く芽生え始めていた。
杏寿郎はふみのが稽古の一環として、
鍛錬に参加しているだけと思い込んでいたが、
ふみのは、槇寿郎がいる"鬼殺隊"への入隊することを
密かに決めていたのだった。
まさかふみのが鬼殺隊を目指していることなど、
杏寿郎は知る由もなかった。
初夏になる頃、瑠火は急に体調を崩し、
寝込むようになった。
医者からは夏風邪と聞かされたが、
なかなか回復しない瑠火を見て、
何かもっと深刻な病なのではと
子どもたちは不安で仕方なかった。
槇寿郎が留守の時は、
子どもたちで瑠火の世話をした。
すぐに元気になります、大丈夫ですよと、
瑠火は心配かけまいと、いつもの笑顔を見せてくれたが、
少しずつ痩せていく瑠火に、さらに不安は募った。