火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第4章 決意と別れ
それから少しずつ、
ふみのの声は出るようになり、
自ら話しかけたり、よく笑うようになった。
ふみのは、槇寿郎に助けてもらった御礼と
つきっきりで看病してくれた瑠火に感謝を伝えることができた。
杏寿郎と千寿郎も、
ふみのとの暮らしを心から楽しんでいた。
どんどん元気になるふみのに
槇寿郎はほっと胸を撫で下ろし、
瑠火は涙を浮かべていた。
ふみのは瑠火のあとをついて周り、
家事を手伝ったり、料理や手芸を教えてもらった。
何気ない日々が、ふみのにとって、
そして煉獄家にとって何にも変えられない幸せだった。
毎晩、ふみのは寝る前に
夜空に瞬く星たちを眺め、家族へ感謝を伝えた。
(煉獄家の皆様に支えていただき、
今日も過ごすことができました。
皆さん本当に優しく、私は本当にしあわせものです。
どうか、どうかこの先も、煉獄家をお守りください。
明日も良い日に、なりますように)
夜風がふみのの頬を撫でていく。
もう少しで夏がくる。
縁側には白い芍薬が大きな蕾をふっくら実らせていた。
(もうすぐ咲そう…!)
毎日のちょっとした変化が
ふみのの心に、やさしい光を灯していった。
杏寿郎とふみのは、
下の名前で呼び合うようになった。
お互いの部屋を行き来し、
自分達のことや鍛錬の話や本のこと、
たくさんのことを話した。
杏寿郎の部屋で、それぞれの本を読むだけのこともあった。
会話のない時間でさえ、それは居心地が良かった。
杏寿郎は、ふみのが鍛錬について、
すごく興味があったわけではなかったことを知り、
早とちりをしていたことを申し訳なく思ったが、
健蔵が剣道を習っていたことを知ったふみのは、
積極的に武術のことを杏寿郎に聞いてきた。
家族のことも笑顔で話すようになったふみのの姿に
ただただ強いひとだと、杏寿郎は思った。