火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
杏寿郎は目線を下ろすと、下唇を噛んだ。
「…父上が、言っていたんだ。
『あともう少し早く屋敷に着いていたら』と。
ふみののご兄弟も、そして一族を、
救うことができたのではないかと」
「ううん。槇寿郎様が来て下さらなかったら、
私はここにはいないもの。
助けてくださったこの命を大切に生きようって、
皆の分まで、一生懸命生きなくちゃって、
いつも思うの。
…またいつか皆に、逢えたらいいな」
杏寿郎は禰󠄀豆子を起こさないように
ふみのの肩をそっと抱きしめた。
「ああ、きっと。
きっと、いつか逢える」
「うん…!
…ごめんなさい、夜も遅いのに。
お話、聞いてくれてありがとう」
「いや、案ずるな。
また…聞かせてくれないか、
ふみのの思い出を」
「うん!杏寿郎、ありがとう…!」
二人は微笑み合うと、
杏寿郎がふみのの頬に口づけを落とした。
「…しまった、竈門妹がいたのだった」
二人ははっと、視線を下に向けると、
禰󠄀豆子からはすうすうと気持ちよさそうな
可愛らしい寝息が聞こえてきた。
「大丈夫。良く寝てるわ」
次は周囲に気をつける!と
申し訳なさそうに杏寿郎は笑った。
「ふみのの部屋まで、
竈門妹をつれていこう」
杏寿郎は禰󠄀豆子を抱きかかえると、部屋を出た。
ふみのはその杏寿郎の後ろ姿に、
何故かぎゅっと胸が締め付けられた。
訪れて欲しい未来を
こんなにも 願ってしまうのは
心の底から
杏寿郎に
恋をしているから
ふみのは熱くなった目頭をぐっと抑えて、
杏寿郎の後を追った。
そして時は経ち、
禰󠄀豆子が煉獄家の生活に慣れてきた頃。
炭治郎の鎹鴉・松衛門が回復の連絡を伝えに
煉獄家へとやってきた。
ふみのと杏寿郎は支度を済ませると、
禰󠄀豆子と共に蝶屋敷へと向かった。
「炭治郎くん!」
「竈門少年!!」
「ふみのさん、煉獄さん…!」
病室の寝台に横になっていた炭治郎は、
身体中に包帯が巻かれ、腕には点滴が繋がれており、
当時の戦闘の凄まじさを物語っていた。