火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
「禰󠄀豆子ちゃんが元気になって良かったわ」
「そうだな。
きっと竈門少年のことも
気になっていたんだろう。
…早く回復するといいのだが….」
「本当ね。しのぶさんにも
また容態を聞いてみるわ」
「うむ。何かあれば言ってくれ」
「うん!」
気が付くと、禰󠄀豆子はふみのの膝の上で
すやすやと小さな寝息を立てて
眠ってしまっていた。
「ふふ、禰󠄀豆子ちゃん、寝ちゃったわ」
ふみのは禰󠄀豆子の背を摩った。
杏寿郎は視線を自身の膝に落とすと
置かれた拳をきつく握り締めた。
その様子にふみのは首を傾げた。
「…杏寿郎?」
「…俺は、柱合会議の際に、
竈門兄弟に対して酷いことを言ってしまったと
ずっと悔やんでいた。
そして、無限列車の任務で
竈門妹の姿を見て驚愕した。
…人の心をもつ鬼がいるとは、
思いも寄らなかった」
「うん、私も驚いたわ。
それまでもきっと、大変なことあったと思う…。
でもその度に、二人は手を取り合いながら、
たくさんの試練を乗り越えてきたのね」
「うむ、…そうだな。
絆というものは、計り知れんな」
ふみのの禰󠄀豆子を摩る手が
ぴたりと止まった。
「…ふみの?」
「…こんなこと、思ってはいけないのだけど、
お化けでも、…鬼もでいい。
もう一度でいいから…、家族に会いたい」
ふみのの目から、ぽたりと涙が落ちた。
杏寿郎はふみのに近寄ると、
頬に伝う涙を拭いてくれた。
「…ふみののご兄弟の話しを聞いても…?」
杏寿郎はもう片方の手でふみのの手を包む。
ふみのは懐かしむように微笑みを浮かべると、
閉まっていた過去を少しずつ話し始めた。
「妹のよしのはね…、とってもおてんばで
元気で、悪戯が大好きで…。
いつもかあさまを困らせてたわ。
叱られても懲りずに何度も悪戯をするの。
…笑った顔がとっても可愛らしくて。
弟の健一郎は、
よしのとは正反対の性格で、
恥ずかしがり屋でちょっぴり泣き虫で…。
いつも私のあとを
一生懸命についてきてくれた」
幼い頃に感じでいた朗らかな日々を思い出し、
ふみのの瞳がまた揺らいだ。