火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
しのぶもふみのの提案に賛同してくれた。
ふみのが禰󠄀豆子にそのことを持ちかけると、
ほっとしたように、うんうんと頷いていた。
煉獄家に禰󠄀豆子を連れて帰った夜。
禰󠄀豆子は床に就くと、今にも泣き出しそうに
桜色の瞳を潤ませていた。
今回の上弦との討伐時に
何かあったのではとふみのは思い巡らした。
「…禰󠄀豆子ちゃん、一緒に寝る?」
そう訊くと、禰󠄀豆子は小さく頷き、
ふみのの布団に潜り込んだ。
昔、兄弟のよしとの健一郎と三人で
一緒の布団で眠りについていたことを
ふみのは思い出していた。
そして母・みちが子守唄を歌ってくれた。
遠い思い出なのに、まるで昨日の出来事のように
みちの優しい歌声が蘇ってくる。
「ほしのした うまれし こに
なりひびく さんびのこえ
みめぐみを ときわにあれと
たびびとは ひつじとともに
あいをば ねがいうたわん」
ふみのは、みちの声を思い出すように子守唄を歌った。
懐かしさで声が揺れた。
ふと禰󠄀豆子を見ると、すやすやと寝息を立てていた。
かあさまに また会いたいな…
ふみのは禰󠄀豆子に、
おやすみと小さく告げると行燈を消した。
翌日、ふみのは禰󠄀豆子の裂けてしまった着物を直すため、
千寿郎と街に出向くと、同じ麻の葉模様の生地を見繕い、
縫い直してあげた。
それからまた数日が経ち、
禰󠄀豆子は少しずつ元気を取り戻していった。
起きている間はふみの達のあとをついて回り、
家事の手伝いをしてくれた。
ふみのと千寿郎が洗濯物を取り込むと、
禰󠄀豆子は日差しを避けながら、
見様見真似で一生懸命に畳んでくれた。
とある晩。
杏寿郎の元へ任務の伝令が再び入るようになり、
それに備えて自室にいた。
とんとんと襖が鳴り、返事をすると、
開いた襖から禰󠄀豆子がひょこっと顔を覗かせた。
「竈門妹か!まだ眠らなくていいのか?」
うんうんと頷き、襖をまた少し開けると、
そこにはふみのの姿もあった。
「突然ごめんなさい…っ。
杏寿郎にね、お茶を淹れようとしていたら、
一緒に持っていきたいって
禰󠄀豆子ちゃんが言ってくれたの」
「そうだったのか!
それは嬉しい!ありがとう!」