火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第22章 思いは光の架け橋へ〈前編〉
天元と炭治郎達による、
上弦の陸の討伐から二ヶ月経ったある日。
ふみのと杏寿郎が庭で稽古をしていると、
炭治郎の鴉・松衛門がやってきた。
炭治郎が先程無事に
目を覚ましたことを伝えにきてくれたのだ。
「…!!本当に!?
良かった…本当に良かったわ…っ!」
ふみのは目を潤ませ、
その知らせに胸を撫で下ろした。
「回復して何よりだ。
松衛門、伝達ご苦労だった。
後ほど、竈門少女を連れて
見舞いに行くと伝えてくれ」
松衛門はカア!と返事をすると、
蝶屋敷の方へと羽ばたいていった。
「私、禰󠄀豆子ちゃんに、
このことを知らせてくるわ!」
「うむ!きっと安心するだろう。
もう昼になる。そのまま休憩も取ろう」
ふみのは家の中に入ると、
自室(光が差し込まないよう戸は閉めてある)に敷かれた
布団の中に蹲る禰󠄀豆子にそっと声を掛けた。
「禰󠄀豆子ちゃん?寝てるのに、ごめんね。
今ね、炭治郎くんの目が覚めたって、連絡が来たの!」
ふみのの声に、布団がもぞもぞと動くと、
眠気まなこの小さな禰󠄀豆子がゆっくりと起き上がった。
うー…?と微睡みながら、目元をこしこしと擦っている。
「起こしちゃってごめんね。
禰󠄀豆子ちゃんに早く伝えたくて…っ」
ふみのは禰󠄀豆子の長い髪をやさしく撫でると、
数回瞬きをした後、安堵からかその瞳が揺らいだ。
「炭治郎くん、きっと禰󠄀豆子ちゃんに
会いたがっていると思うわ!
あとで、蝶屋敷に一緒に行きましょうね」
ふみのがにっこりと笑うと、
禰󠄀豆子も、うー!と手を上げ喜んでいた。
ふみのと杏寿郎が
刀鍛冶の里から戻った朝。
薫子より、真夜中に吉原遊郭において上弦の鬼が出現し、
天元と炭治郎達がその頸を斬り落としたと聞かされた。
ふみの達は急いで蝶屋敷に向かうと、
炭治郎達はしのぶやアオイ達により処置を受けていた。
炭治郎は意識はあったものの、
目を覚ますのはもう暫く掛かると
しのぶは宣告していた。
禰󠄀豆子の怪我は既に殆ど完治していたが、
着物も酷く裂けてしまっていた。
善逸や伊之助も要安静のため、
ふみのはしのぶに炭治郎が回復するまで
煉獄家にて禰󠄀豆子を預かることはできるかと申し出たのだった。