火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第21章 希(まれ)を込め、想う ˖☽°.*
息を忘れるほどの灼けるような口づけに
ふみのの意識が朦朧としてくる。
どれだけそうしていただろう。
名残惜しくも、静かに離れた互いの唇を
細い糸が繋いだ。
見つめ合い、二人の荒い吐息が混ざる。
「…すまない、苦しかったか?」
「ううん…大丈夫」
杏寿郎の唇がふみのの額に
ふわりと充てられた。
唇を離して視線を落とすと
上目遣いで潤むふみのの瞳に
杏寿郎の熱が疼く。
時々ふみのが見せる幼子のような
あどけない表情に、杏寿郎は目を奪われる。
「杏寿郎…?」
「ん…?どうした?」
ふみのは杏寿郎に握られた右手に視線を向けた。
「…右腕が、動くようになったらね、」
ぽつりと、消えそうな声で
ふみのは呟く。
「もちろん、日輪刀を握れるようにも
なりたいのだけど、
…また、杏寿郎と、
手を、繋いで…歩けたらいいなって思ってて」
ふみのの落とすような儚い微笑みに、
杏寿郎はその右手をさらにぎゅっと握った。
「ふみの。
俺は、ふみのの手を、
決して離したりなどしない」
ふみのは再び杏寿郎に顔を向けると、
その揺るぎない眼差しに釘付けになった。
ふみのは右手に戻りつつある、
僅かな握力で、杏寿郎の手を握ると、
杏寿郎もその手をそっと握り返してくれた。
「杏寿郎…大好き」
「俺も、ふみのが好きだ」
夜の秋風が、熱った二人の頬を
掠め冷ましてゆく。
杏寿郎はふみのの顎をそっと持ち上げると、
さらに深く甘い口づけを薄紅色の唇に落とした。
湯から上がり浴衣を纏うと、
杏寿郎はふみのを抱きかかえ、和室に向かった。
部屋には一組の布団が敷かれ、
杏寿郎はふみのを横たわらせ覆い被さると、
重なる視線も束の間、杏寿郎がふみのの唇を奪う。
ふみのの両手首を杏寿郎が柔く掴み、
自由が上手く効かなくなったふみのは
杏寿郎の愛撫にただ身を委ねてゆく。
湯で火照った細い首筋に
杏寿郎の厚い舌がつうっと充てがわれた。
「やっ…、んん」
目眩が起こりそうなほどに、
二人の体を灼熱が這い回る。
言葉は無くとも、
本能のまま求め合う互いの熱に
身も心も溶けていくようだった。