火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第21章 希(まれ)を込め、想う ˖☽°.*
立ち上る湯気の向こうに小さく瞬く星を
ふみのは見上げた。
大丈夫 少しずつ できることを
ぐっと冷え込んだ夜風が頬に当たり、
ふみのは肩をさらに湯に沈めた。
「ふみの?」
「っ!!??」
突然名前を呼ばれ振り返ると、
杏寿郎の影が脱衣所の磨り硝子に映っていた。
「きょ、杏寿郎…っ!?」
「嫌なら断ってもらって構わない。
…ふみのと湯浴みをできればと思ってな」
「…!!
う、うん!大丈夫よ!」
杏寿郎は我儘を言っていると思ったが、
どうしてもふみのと一緒にいたいと思う気持ちが抑えられず、
ここまで来てしまった。
ふみのも恥ずかしさのあまり、
もう少し時間が欲しいと先延ばししていたことを思い出し、
杏寿郎の気持ちを考えていなかったと申し訳なく思った。
背後から、ガラッと戸が開く音が聞こえたが、
ふみのは緊張のせいで杏寿郎の顔が見れなかった。
「入るぞ」
「う、うん!」
ふみのは体に巻きつけてある
木綿の布に手を伸ばし胸元をぎゅっと握った。
ザブンと湯船の水が立ち、杏寿郎の逞しい胸板が
ふみのの背中に当たると後ろから抱きしめられた。
「まだ慣れないか?」
「もう緊張しないと思ったけど…、
なんだろう、やっぱりどきどきしてしまうわ…!」
脱衣所からの灯がうっすらと湯船の方に伸び、
二人をぼんやりと照らした。
杏寿郎の大きな両掌が、ふみのの二つの手を握る。
ふみのの耳殻を杏寿郎の口唇がなぞると
びくりとその肩を震わせた。
「杏寿郎っ、擽ったい…っ!」
「すまない。ふみのが目の前にいるのに、
…もっと、触れていたいと思ってしまう」
杏寿郎の艶やかな声色に
ふみのの鼓動が性急に速まる。
杏寿郎はふみのの両手を握ったまま、
ふみのの華奢な体をぎゅっと包み込む。
緊張のせいなのか
湯の温度のせいなのか
二人の総身が少しずつ熱り始める。
ふみのは顔だけ杏寿郎に向けると、
口先を自らその唇に近づけ、
甘い声で杏寿郎を誘う。
「…杏寿郎、…ここに、して…?」
「…ああ、勿論」
杏寿郎からの熱い口づけに
ふみのの身奥はきゅうっと締め付けられた。