• テキストサイズ

火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第21章 希(まれ)を込め、想う ˖☽°.*




とんとんと包丁がまな板を叩く音が台所に響く。
丁寧にさつまいもを切る杏寿郎を
ふみのはちらりと見た。

楽しそうに調理をする杏寿郎の横顔に
ふみのも自然と笑顔になった。

「ふみの、このぐらいの大きさで良いか?」

「うん! …!
 杏寿郎は包丁裁きが綺麗ね」

「そうか!ふみのに褒めて貰えるとは光栄だ!
 …うむ、一応剣士として、
 刀を握っているからやもしれんな!」

杏寿郎らしい返答に
ふみのはくすっと笑った。

「…それはそうとふみの。
 今日は袴を着ているのか?」

「うん、そうなの!薫子さんが前田さんっていう、
 隊服を作ってくださる隠の方にお願いしてくれたの」

深い紺色の袴に、菜の花色の着物が映える。
袴であれば大きな帯もなく、
また普段の着物も着れるので、
薫子がふみのに話しを持ちかけていたのだ。

「着物姿のふみのも大層美しいが…、
 袴もよく似合っているな」

「あ、ありがとう…っ!
 私、杏寿郎の隊服姿も好きだけど…、
 今日の着流しもとっても似合ってるわ!」

頬を染めて、照れ笑いするふみのと杏寿郎。

ささやかで、やさしい朝の時間に
二人は癒された。



ふみのは少しでも右腕の為にと、
無理のない範囲で今ある僅かな握力で、
刀の柄を握ったり、ゆっくり持ち上げたりと
機能回復に努めた。
杏寿郎も自分の鍛錬をしつつ、ふみのに付き添った。



その晩、ふみのは離れの中にある湯に浸かり、
ひとり身体を温めていた。


 やっぱり、この温泉ってすごい…!


昨日より、指先の可動域が増していたのだ。
感覚もどんどん鮮明になっていくように感じる。
握力はそこまでではないものの、
もう少しで緩く拳を握れそうだった。

ふみのは目に見えて回復していく
身体の様子に嬉しさで視界が馴染んだ。


 …希を込め、想う


たとえ不可能に近いことでも、
自分の最善を、尽くしていきたい。

それはもしかしたら
何の役にも立たないかもしれない。

でも、そこで諦めてしまえば、
全てがなかったことになってしまう。


 僅かな希望でも、信じたい


自分に少しでも何か可能性があるのであれば、
支えてくれる大切な人達の為に
使命を果たしていきたいのだ。

/ 545ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp