火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第21章 希(まれ)を込め、想う ˖☽°.*
「うむ、自分ではなかなか分からないものだな」
すると、ふみのが手を口元に当てながら
ふぁっとあくびをした。
「今日は疲れただろう。
ゆっくり休むといい」
「ありがとう。…杏寿郎があったかくて、
眠たく…なって、きちゃった…。
杏…寿郎、私…杏寿郎の、こと…」
「…? ふみの…?」
すると、ふみのから規則正しい寝息が
すうすうと聞こえてきた。
子猫のように胸元に顔を擦り寄るふみのを
杏寿郎は起こさないようにそっと抱きしめた。
そして耳元に、杏寿郎は囁く。
「ふみの、お休み。
…愛している」
すると、ふみのが眠りながら小さく笑った。
この心落ち着く安らぎの時間が
どうかこのまま続いて欲しいと、
杏寿郎は儚くも切に祈った。
ふみのの額に、
杏寿郎はそっと口づけを落とし、目を瞑った。
鳥の囀りが、朝陽と共に和室に響く。
ふみのはまだ少し重たい瞼をゆっくり開けると、
そこは杏寿郎の逞しい腕の中だった。
愛おしい人の腕に包まれながら目覚める幸せに
ふみのの心は綻んでゆく。
昇ったばかりの陽光に微睡が溶け合い、
それはまるで夢心地だった。
杏寿郎の愛らしい寝顔を眺めていると、
自然と頬が緩んでしまう。
杏寿郎、おはよう
今日も素敵な一日になりますように
ふみのは掠めるような口づけを杏寿郎にすると
起こさないようにそうっと布団から出た。
身なりを整え、一足先に台所へと向かう。
調理の支度に取り掛かっていると、
間も無くして、隠が里の食材を届けてくれた。
ふみのは礼を伝え、それを受け取ると、
手際良く食材を捌いてゆく。
暫くして、杏寿郎が台所にやってきた。
「ふみの、おはよう。
すまない…、少し寝過ぎてしまった」
「! 杏寿郎、おはよう!
ううん、私が早くに目が覚めちゃったの。
今朝食の準備をしているから、
居間で待っててね」
「ふみのの手伝いをしたい!
俺にできることはないだろうか?」
「! そうねえ…。
じゃあ、お味噌汁用のさつまいもを
切ってもらってもいいかしら?」
「うむ!承知した!」