火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第21章 希(まれ)を込め、想う ˖☽°.*
「ほう、ふみのさんというのか。
…杏寿郎殿、槇寿郎殿もそうだが、
君も良き伴侶と出会えて何よりだな!」
「っ!?!」
「はっ、伴侶!ですか!!
ふみのはそのっ、」
「まぁまた、二人の馴れ初めも聞かせて欲しい。
今日は此処まですまなかったな。
ではまた」
丈市は、よいしょと言いながら
家の中へと入っていった。
二人の間に、若干の気まずさが流れる。
「…す、すごく素敵な方だったわね!」
「う、うむ!会えて良かった!」
「あっ、そうだ!秋桜、見に行く??」
「そ、そうだな!向かおうか!」
何故か二人は緊張してしまい、
手も繋げなくなってしまった。
庭園に向かうと、園内の秋桜は満開を迎えていた。
溢れかえるほどの秋桜に、二人はその景色を愉しんだ。
何色もの秋桜が風に揺れ、頬を撫でる風が秋めいていた。
ふみのと杏寿郎は
久しぶりの二人の時間に心弾ませていた。
離れに戻り、近くにあると聞いた
温泉に向かおうということになった。
離れの中にある露天(湯船は一つのみ)もどうかと
杏寿郎が誘うも、もう少しだけ待って欲しい!と
ふみのは恥ずかしそうにその頬を赤らめていた。
ふみのは今になって、
この離れで杏寿郎と二人きりで過ごすのだと気付き、
どきどきとその鼓動が速まる。
支度をしていたふみのの手が、ふと止まった。
もし、杏寿郎と
夫婦になれたら
どんなに…幸せなのかしら
いつかその日を
迎えることができたなら───…
鬼殺隊にいる以上、
そしてこの世に鬼が存在している限り、
自分の命が続いていくという保証はない。
人の命は尊く、
約束は、なんと儚いのだろう。
今日という日を共に過ごせているだけで
それは奇跡なのだと、ふみのは思う。
ふみのは、ぼうっと目線の先の庭を眺めた。
「…ふみの、どうした?
疲れてしまったか?」
ふみのが居間に姿を見せないので、
杏寿郎が迎えにやってきた。
「あ!ううん!ち、違うの!
…杏寿郎と、二人っきりになるの、
久しぶりだなあと思ったら…嬉しくて」
「…そうか」
杏寿郎はふみのの頬を愛おしそうに
両手で包み込んだ。