火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第21章 希(まれ)を込め、想う ˖☽°.*
「あと、念の為、予備の日輪刀を
お渡し致します。
刀が出来るまでの間、
こちらをお使い下さいませ」
では失礼しますと、
その隠は離れを出ていった。
「…あ!杏寿郎の日輪刀!」
「うむ!渡しに行かねばな。
ただ移動もあり疲れたろう。
少し休んでから向かおう。
もしよければ、
帰り道に帯金殿が言っていた
秋桜も見に行ってみないか?」
「うん!」
二人は縁側で休息を取ると、
杏寿郎の日輪刀を打った刀鍛冶の元へ向かった。
煉獄家の日輪刀を打つ刀鍛冶は、
火撫(ひなで)家と決まっていた。
火撫家は里で二番目に古く、
現在は喜寿を迎えたばかりの
火撫丈市(ひなでじょういち)を筆頭に
刀鍛冶の歴史を後世へと繋いでいた。
丈市は里内では、かなりの頑固者として知れ渡っていたが、
杏寿郎曰く、とても温厚な人とのことだった。
「御免下さい!ご無沙汰しております!
煉獄杏寿郎と申します!」
丈市の大きな家の門を潜り、
戸の前で杏寿郎が挨拶をした。
すると戸が開き、
ひょっとこの面をつけた
少し背の曲がった男性が姿を現した。
「…杏寿郎殿、久方ぶりだな。
息災であったか」
「ええ、お陰様で!
丈市殿もお元気そうで何よりです!」
「…槇寿郎殿も、息災か」
「はい!父も変わらず元気にしております」
「そうか。それは何よりだ。
私は見ての通り、
腰の曲がった老人になってしまった。
以前のようにあまり動けなくてな。
…情けないことだ。
…だが、また炎の呼吸の日輪刀を打てると思うと、
刀鍛冶の魂が唸る。
必ずや、良いもの打つ。
七日程、時間を貰いたいのだが、
構わないか?」
「はい、勿論です。
お手を煩わせてしまい、
申し訳ありません。
その頃、またこちらに参ります」
「いやいや、
剣士殿の日輪刀を打てること以上に、
嬉しいことはないからな。
足労かけてすまないね」
杏寿郎は布で包んであった日輪刀を
丈市に渡した。
「茶の一つでもと思ったが、
すぐに取り掛かりたい。
また次にでも話しをゆっくり聞かせてくれ。
…それで、そちらのお嬢さんは?」
「あっ…、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。
私、一ノ宮ふみのと申します…!」