火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第21章 希(まれ)を込め、想う ˖☽°.*
庄衛の説明にふみのの目の前には
今まで起きたことが走馬燈のように駆けてゆく。
下弦の鬼から一族を殺された事実を知り、
目の前で親友の蓮をも苦しめられ、
感じたこともない狂気が湧き上がった。
するとその感情を嫌悪するかのように
瞬時に鉛の如く重くなった日輪刀。
しかしそれに臆することなく、
蓮を救いたいと思う一心で
無我夢中で刀をを振り下ろした。
光の呼吸の謎に怯えながらも、
守りたい人達を想い、
独り刀を振った日々。
そして猗窩座と杏寿郎の死闘を目の当たりにし、
杏寿郎を守らねばと、ただそれだけを思い、
猗窩座へと迫り出た。
杏寿郎を 失いたくない
この身はどうなっても構わないから
杏寿郎だけは
どうか 生きていて欲しい────
全く歯が立たない鬼の威力に
自分の弱さが打ちのめされ、
大切な人を失ってしまうかもしれないという
恐怖に駆られながらも、抑え切れない怒りを、
容赦なく人を殺めようとする猗窩座へと向けた。
だが、その憎悪を阻止するかのように
『刀を下ろせ』と呼吸の聲が響くと同時に、
刀は折られ、ふみのは我に返った。
ふみのは漸く気付いた。
日輪刀は、憎しみに染まる手のまま、
刀を振って欲しくなかったのだと。
(だから…、
突然、刀が重くなったり…、
私に気付かせる為に
あの高い金属音が…っ)
大切な人を守りたい
もう誰も 死なせたくない
いつか 皆が安心して
大切な人と一緒に暮らせる毎日が
訪れますように────
日々、祈るように唱えた
ふみのの切なる願い。
この希望(のぞみ)が、
ふみのと光の呼吸を繋いでいたのだ。
「私…、光の呼吸のことも、日輪刀のことも、
何も分かっていませんでした…。
…一度、刀を折ってしまったこの私に…、
また光の呼吸を使う資格はあるのでしょうか…」
不安そうに話すふみのに
庄衛はやさしく語りかけた。
「ふみの殿、
決してそう思わないで欲しいのです。
呼吸が、その聲が、ふみの殿に
“希を切り拓け”と伝えているのです。
呼吸自身も、貴方のことを信じているのだと
私は思います」
「…! 帯金様…っ」
ふみのの瞳に薄らと涙が滲む。