火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第21章 希(まれ)を込め、想う ˖☽°.*
「まぁなんて立派なお辞儀やこと。
ええ子やな。
かりんとうをあげよう」
鉄珍が溢れんばかりのかりんとうが入った籠を
杏寿郎に差し出す。
二人は、ぱりんと一口頬張った。
「君、煉獄家の御子息さんやな。
槇寿郎殿は息災かの?」
「はい!お陰様で元気に過ごしております。
現在は自分が父の後を継ぎ、
炎柱を担っております」
「そりゃまあ、何とも立派なことや。
槇寿郎殿も、ホンマええ子に恵まれたなぁ。
…ほんで、お隣のお嬢さん、
ふみのさんやな。
庄衛から話は聞いとるよ」
「鉄珍様、
今日はお時間いただき、
ありがとうございます。
お会いできて、光栄です…!」
「まあまあ、ふみのさんや、
そんな畏まらんでええ。
庄衛も、間も無くここに来るはずや。
ふみのさんの呼吸について
よう調べてはったで」
「…!」
庄衛のその姿を思い、
ふみのは声を詰まらせた。
「…二人共、上弦の鬼に遭遇したと聞いとる。
…嘸かし大変やったな。
ここの里の温泉はよう身体に効く。
折角来られはったんや。
少し行ったところにある
離れの宿で寛いでってや」
「ありがとうございます。
鉄珍殿の御心遣いに、深く感謝致します」
杏寿郎が礼を述べ、
ふみのと深々と頭を下げたと同時に、
襖がとんとんと鳴った。
「ん、庄衛か?」と鉄珍が訊くと、
はいと返事が聞こえた。
「二人とも、この部屋を使い。
ワシはちょいと出てくる」
鉄珍が立ち上がると、
護衛の二人が先に襖を開けた。
「いつでも気兼ねなく立ち寄ってや」と
鉄珍は言い残し、部屋を後にした。
その後に続き、護衛達も部屋を出ると、
入れ替わりで庄衛が入ってきた。
「煉獄殿、ふみの殿。
今日は里までお越し下さり、
ありがとうございます」
庄衛はその場に膝をつき、頭を下げた。
背丈が六尺もある彼だが、
物柔らかな雰囲気がそれを感じさせなかった。
「帯金様。ご無沙汰しております。
…この度は、お創りいただいた日輪刀を
折ってしまい、大変申し訳ありませんでした…」
「ふみの殿。
そのように思われないで下さい。
…これは私の力不足です。
…だが、光の呼吸の日輪刀は、
他とは少々、構造が違うと、思われます…」