火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第21章 希(まれ)を込め、想う ˖☽°.*
それから二日後の朝────
ふみのと杏寿郎は
刀鍛冶の里に向かう支度をしていた。
「ふみの、部屋に入っても良いか?」
杏寿郎がふみのの部屋の襖を叩くと、
「あ!もうちょと待っててね!」と返事が返ってきた。
程なくして「お待たせしました」と
部屋から出て来たのは、薫子だった。
「! 薫子少女!」
「炎柱様。おはようございます。
お待たせしてしまい、申し訳ありません。
ふみの様の着付けをしておりました」
「着付けを?」
「はい。では外でお待ちしておりますので、
ご用意ができましたら、いらして下さい」
「ああ、承知した。
すぐに向かう!」
では一旦失礼しますと薫子は頭を下げて、
玄関へと向かっていった。
「杏寿郎、ごめんね。
お待たせしちゃって…」
杏寿郎が部屋に入ると
薄桃色の着物を着たふみのが
姿見の前に立っていた。
裾には小花の模様があしらわれていた。
「ど、どうかな…?
かあさまの、お着物なの…!」
少し照れながら、
ふみのは杏寿郎を見た。
「成程、ふみのの母君の…。
ふみのに、とてもよく似合っている」
「あ、ありがとう…!
この間、杏寿郎が槇寿郎様のお着物を
着ていたでしょう?
…私も、かあさまのを、着てみようかなって」
ふみのはくるり向きを変えて、
鏡でその姿を見つめていた。
鏡越しに映るふみのの瞳が
揺れているようにも見えた。
杏寿郎がふみのに近づき、
「ふみの」とそっと声を掛けた。
「きっとふみのの母君も
大層喜んでおられるに違いない」
「ふふっ、そうだと嬉しいな。
槇寿郎様にこの着物を見つけて頂いて、
本当に嬉しかったの。
…ごめんね、なんだかしんみりしちゃったね」
「いや、もっとふみのの家族の話しを…、
他にも沢山聞いてみたい。
里に着いたら、また続きを聞かせてくれないか」
「うん…!」
さ、参ろうと、
杏寿郎はふみのの手を取り、
部屋を後にした。
玄関では槇寿郎と千寿郎が
見送りをしてくれた。
「兄上、ふみのお姉様。
どうかお気をつけて」
「杏寿郎、ふみのさんを頼んだぞ」
「はい!父上、千寿郎、行って参ります!」