火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
「…もう。私は杏寿郎に
こんなにも惹かれているというのに」
むうっと頬を膨らませるふみの。
「私が一番好きなのは、…杏寿郎よ?」
真剣にじっと目を見て話すふみのに
杏寿郎は緩む広角を抑えて、
喰むようにその唇を覆う。
そしてふみのの頭部を支えながら、
ゆっくりと床へと押し倒した。
顔を離し、横になったふみのと目が合うと、
杏寿郎はふみのの着物の帯に手を掛ける。
しゅるりと帯が解かれ、着物の襟元が緩むと、
杏寿郎の口唇が白い首筋へと伝ってゆく。
「…んっ」
目をぎゅっと閉じて、
声を抑えるふみのの仕草が
杏寿郎の昂りへと拍車を掛ける。
杏寿郎が名残惜しそうに首元から顔を離すと、
甘く蕩けたふみのの瞳と重なった。
「…やはり、ふみのは愛いな…」
幸せに微笑むふみのの左手が
杏寿郎の頬に触れた。
「杏寿郎…?
…何度も、ごめんね。
私、杏寿郎が…、大好きなの」
二人の熱が、限界へと近づいてゆく。
「ああ。俺も、ふみのが大好きだ。
…このまま、ふみのを抱きたい。
…良いか?」
ふみのは一際甘い眼差しを向けてこくんと頷くと、
杏寿郎は行燈の灯りをそっと消した。
二人の影が、静かに重なり合う。
満月の光に照らされた霞草が
ふわりと風に揺れていた。
艶やかな夜風は、
ふみのと杏寿郎を優しく包み込み、
二人だけの甘い夢へと、誘ってゆく─────