• テキストサイズ

火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第20章 お見舞いと花束



すると、とんとんと襖が鳴る。
どうぞと返事をすると、
杏寿郎が入ってきた。

「ふみの、湯浴みは済ませたのか?」

「ううん、まだこれからで…。
 杏寿郎から貰った霞草がね、
 とっても綺麗で、ずっと眺めていられるの」

「そうか、気に入ってもらえて何よりだ!」

杏寿郎はそう言いながら、
ふみのの横に腰を下ろすも、
尚も、霞草に目を向けている。

「杏寿郎、見て?
 この蕾、明日には咲きそうよ!」

嬉しそうに霞草を見つめるふみのに
杏寿郎は目を細める。
ふみのはその視線に気付くと、
はっと杏寿郎を見た。

「杏寿郎、…どうかした…?」

「いや、喜んでもらえて良かったと、思ってな」

杏寿郎がそっとふみのの頬を撫で、
そのまま首筋へと充てがうと、
ゆっくりと二人の唇が交じり合う。

「…っん、」

顔の向きを変えながら、
杏寿郎はさらにふみのの口唇を弄る。

「きょ、じゅ…っ」

吐息ごと這うような口付けに
ふみのは自分の首に伸びる杏寿郎の手首を
ぎゅっと掴んだ。

暫くしてその唇が離れると、
ふみのの頬が薄く紅潮していた。
その様子に、杏寿郎の熱が疼く。

「…すまない、苦しかったか?」

「う、ううん!大丈…、 ひゃっ!」

杏寿郎はしどろもどろするふみのを抱き寄せると、
胡座をかいた上に、ひょいと横向きに乗せた。
杏寿郎が両腕で包み込むように抱きしめると、
ふみのの頬が更に赤く染まる。

杏寿郎は照れるふみのに迫り、
触れるだけの口づけをした。

「…これで暫く、
 ふみのの顔を見ていられる」

「…? ど、どういうこと…?」

ふみのが不思議そうに首を傾げると
杏寿郎の腕がふみのの後頭部に伸び、
ゆるく纏めていた髪を簪ごと引き抜いた。

「ぁ、」とふみのが声を漏らすと、
その髪がぱさりと音を立てながら解かれ、
杏寿郎がその一束を掬うと、
指の合間からするりと落ちた。


「…どうやら俺は…、
 花に、…嫉妬をしてしまったようだ」

「…!」


困ったように笑う杏寿郎に
ふみのは釘付けになる。


 杏寿郎も こんな顔するんだ…


ふみのは
そっと杏寿郎の額に口付けを落とした。

/ 545ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp