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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第20章 お見舞いと花束




するとふくが、すくっと立ち上がり、
「あ、あの!」と切り出した。

「おばあちゃんと一緒に作った新作の
 桜のちらし寿司をお持ちしたんです!
 良かったら皆さんで召し上がってください!」

杏寿郎とふみのが居間に入ると、
ふくが座卓に置いた萌黄色の風呂敷を皆で覗く。
風呂敷を解くと、
朱色の漆で塗られた二段重ねの重箱が現れた。

ふくが重箱の蓋を開けると、
そこには桜の花弁の塩漬け、桜田麩、錦糸卵、
酢れんこん、干し椎茸の煮物、絹さやといった
様々な食材たちが美しく盛り付けられていた。

「うわあ…!とっても綺麗ですね…っ!」

ふみのが歓喜の声を上げる。

「これは凄い。見事ですね…!」

本当に素晴らしいなと、
槇寿郎もその彩りに見入っていた。

「あ、ありがとうございますっ!
 一つ一つ、おばあちゃんが
 味付けして作ったんです!
 どうしても食べていただきたくて…!」

「よもや!それは有難い!
 …もし宜しければ、
 皆さんで一緒に頂きませんか?」

「是非そうしましょう!
 俺、お吸い物の用意をしてきます!」

杏寿郎と千寿郎も目を合わせ、相槌を打つ。

「ええっ、でも私達は
 いつでも食べられますし…っ!」

躊躇うふくに、ふみのはにっこり笑った。

「ふくさん、皆で食べたらもっと美味しいです!
 是非、一緒に頂きましょう?」

ふくとトミはその言葉に顔を合わすと、
トミが座ったまま、小さくお辞儀をした。

「では、お言葉に甘えて…。
 皆様、お気遣い頂き、
 本当にありがとうございます」

今、準備をしてきますねと
ふみのと千寿郎は台所へ向かった。


その日の昼、煉獄家では、
賑やかに愉しい時間が流れていった。





その晩。

ふみのは杏寿郎から貰った霞草を
花瓶に生けて部屋の書机に飾り、眺めていた。

花を貰ったこともそうだが、
何より杏寿郎が、花言葉の意味も込めて
選んでくれていたことが嬉しかったのだ。


(…やさしい、いいかおり)


ほんのりと甘い香りが、ふみのを包む。

これから咲くだろう白い小さな蕾と
幾重にも繊細に重なる花弁が、愛おしさに溢れる。

ふみのは儚くも
尊い植物の神秘に魅せられた。

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