火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
「杏…寿郎、ありがとう…っ。
とっても、嬉しいわ。
本当に…ありがとう…!」
涙で声を詰まらせるふみのの頬を
杏寿郎は愛おしそうに両手で包む。
「霞草の花言葉は、
“感謝”と“幸福”だそうだ。
…ふみのを、
心から愛おしく想う。
ふみのを好きだと想えることが
…こんなにも、幸せなんだ」
杏寿郎の言葉に、
ふみのの目から涙が止めどなく溢れる。
それを杏寿郎は指先で拭い取ってくれた。
「…そんなに泣いては
折角の可愛らしい顔が
台無しになってしまうぞ?
…笑ってくれないか、ふみの」
これ以上ないくらいに
やさしく微笑む杏寿郎に
ふみのはぐっと涙を堪え
にっこりと笑った。
「杏寿郎…、私も杏寿郎が大好き。
とっても幸せ…っ!」
二人は見つめ合うと、
倖せそうに綻んだ。
「す、素敵です!杏寿郎様っ!!」
「「っ!??」」
背後からふくの声が響き、
ふみのと杏寿郎はびくりと肩を震わせて
はっと我に返った。
すると、玄関からかろじて見える
居間の襖から四人が顔を出して、
ふみのと杏寿郎を見つめていた。
「杏寿郎様は、
本当に紳士な方であらせられるのですねっ!!」
ふくは身を乗り出しながら、
きらきらと目を輝かせて
ふみのと杏寿郎を見つめている。
そして槇寿郎と千寿郎、トミも
二人の様子に頬を染めて見入っていた。
(…杏寿郎もなかなか
粋なことをするな…)
息子の大胆な行動に、
槇寿郎も思わず呆然としてしまう。
「兄上はしのぶさんのところではなく、
花屋に行かれていたのですね!」
「よ、よもやっ!!
この一部始終を見られていたとはなっ!!
穴があったら入りたいっ!!!」
杏寿郎も今回ばかりは恥ずかしかったのか、
笑顔で必死にその場を凌いでいた。
「わ、私も…穴があったら入りたいです…っ」
ふみのも皆の視線から逃げるように、
真っ赤にして顔を外方に向ける。
ふみのと杏寿郎の
初々しい恋人同士のようなやりとりに、
四人も気恥ずかしくなってしまう。
場所を考慮すればよかったな!と
照れながら話す杏寿郎にふみのは、
どきどきしてとっても嬉しかったわ!と
嬉しそうに話していた。