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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第20章 お見舞いと花束




ふみのは千寿郎の言葉に
勇気付けられるようだった。


ふみのの一族が鬼に襲われた日の夜、
あの場に槇寿郎が現れなければ
自分も今を生きてはいないのだ。


誰かのたった一つの行いが巡りに巡り、
助けを求めている人へと届いているのなら───


命はきっと、自分の見えないところで、
沢山の人を通じて守られているのかもしれない。


そうだとしたら、
今、こうして生きている感謝を
どう言葉にして言い表せば、いいのだろう。


 命が 命を

 繋いでいくんだ───…


大切な人を守りたいと思う気持ちが、
ふみのの心をさらに漲らせてゆく。


 もう 誰も悲しんで欲しくない

 大切な人達が ずっと笑っていて欲しい


ふみのはぎゅっとあたたかくなる胸元を
左手で押さえた。



すると玄関の戸が開く音が鳴り、

「今戻りました!!」

同時に杏寿郎の弾けるような
威勢の良い声が響き渡った。

「! 杏寿郎だわ!
 私、今呼んできますね!」

ふみのはさっと立ち上がり、
玄関の方へ駆けてゆく。


「杏寿郎、お帰りなさい!」

「ああ!すまない、
 少々長居をしてしまった!
 客人が…来ているのか?」

「そうなの!
 ふくさんとトミさんっていう方がいらしてて。
 杏寿郎が列車に乗る前に寄った
 お弁当屋さんの方なんだけど…」

「ああ!あの時の!
 …でも何故、此処に?」

「杏寿郎と槇寿郎様にね、
 助けて貰ったお礼がしたいって
 来て下さったの」

「そうか、それは辱い…。直ぐに行く!」

「うん!居間で待ってるね!」

ふみのがくるりと向きを変えようとすると、
杏寿郎にふわりと手首を握られた。


「…その前に、ふみの。
 …──これを君に」

「??」


杏寿郎が背中に隠していた
もう片方の手をふみのへ差し出すと
そこには溢れんばかりに咲き誇る霞草が現れたのだ。


「……っ!」

「ふみのに花を贈りたくてな。
 他にも白い花が幾つかあったのだが、
 …花言葉を教えて貰い、霞草を選んだ」


差し出された霞草の花束を
ふみのはそっと受け取った。

小さな白い花弁たちが
星の瞬きのように美しく揺れる。

好きな人から花を贈られる嬉しさに
ふみのの視界が涙で滲んだ。

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