火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
「…全く、同じだったのです。
お二人のお姿が
目の前で重なったようでした。
刃から立ち上る勇ましい光炎、
その佇まい、全てが…煉獄様のお父上様、
…槇寿郎様そのままだったのです。
私達は槇寿郎様、煉獄様…杏寿郎様のお陰で
今を…生きていると言っても
過言ではありません」
すると、居間の襖がとんとんと鳴った。
失礼しますと、静かに襖が開くと、
槇寿郎が正座をしていた。
「……!」
トミの目が大きく見開かれた。
「…お待たせをしてしまい、
大変申し訳ありません。
私は、杏寿郎の父、
煉獄槇寿郎と申します。
この度は此方まで訪ねて頂き、
有難うございます」
槇寿郎が床に手を突き、
深々と頭を下げた。
トミは静かに立ち上がると
槇寿郎の前に腰を下ろし、
やさしく声を掛けた。
「槇寿郎様。
どうかお顔をお上げくださいませ」
槇寿郎がゆっくり顔を上げると、
トミが泣きそうに微笑んでいた。
「…やっと、お伝えできます。
私達をお守り頂き…、
本当にありがとうございました」
すると、ふくも慌ててトミの横に腰を下ろし、
槇寿郎を見つめた。
「槇寿郎様。
おばあちゃんを…祖母を助けていただき、
本当にありがとうございました。
もしあの時、
槇寿郎様がいらっしゃらなければ、
…私は此処にはいません。
本当に、本当に…ありがとうございました…っ!」
トミとふくは涙を堪えながら、
手をつき、槇寿郎に頭を下げた。
「トミさん、ふくさん、
どうか顔を上げて下さい。
剣士として、当然のことをしたまでです。
私も、あの時は名乗りもせずに立ち去り、
申し訳ありませんでした。
…ご無礼をお許し下さい」
トミの頬に一筋の涙が伝う。
槇寿郎の手に、トミは手をそっと重ね、
感謝の意を表した。
その様子をふみのと千寿郎は
やさしく見守っていた。
「父上と兄上に
こんな出来事があったなんて…。
俺…知らなかったです」
千寿郎がぽつりと呟く。
その瞳は泪ぐんでいた。
「…本当ね。
槇寿郎様も、杏寿郎も
たくさんの方の命を…守ってきたのね」
「ふみのお姉様、
それはふみのお姉様もですよ。
…生きるということは、
命を繋いでいく…ということなのですね」