火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第20章 お見舞いと花束
「牛鍋弁当です!
おばあちゃんが考えるお弁当は
どれもとっても美味しいのですが、
私はこれが一番大好きでっ!
お弁当を気に入ってくださって、
本当に嬉しかったんです!」
ふくがにこにこと話す様子に、
横にいるトミは目を細めた。
「…でも、その翌日の朝刊に
列車が事故により横転したと
書いてあったのを見て…。
…煉獄様は、ご無事なのかと、
とても心配でした。
何か、煉獄様のことを知れる手掛かりはないかと
後日色々と尋ねていたところ、
“キサツタイ”という
鬼を狩る組織があると聞いたんです。
そうしたら一昨日、
煉獄様と同じ服を着た方を
駅でお見かけして…、
お声を、掛けさせて頂いたんです。
“炎のような羽織を纏った方は
ご無事でしょうか”と…。
…それで…、突然ではあったのですが、
本日こちらに、お訪ねしてしまったのです…」
ふみのは杏寿郎が無限列車に乗る前に、
そのような出来事があったとは知らず、
ふくの話しを相槌を打ちながら傾聴していた。
「そうだったのですね…!
…でも、槇寿郎様のことは、どうして…?」
ふみのがふくに訊くと、
トミがゆっくりとその口を開き、
昔を懐かしむように話し始めた。
「煉獄様のお父上様は
槇寿郎様と…仰るのですね。
これは二十年も前の事になりますが…。
ふくの…、この子の母がまだ小さかった頃、
私は娘と一緒に雨が降る夜道を歩いていました。
すると突然、後ろから恐ろしい目をした鬼が
襲いかかってきたのです。
咄嗟に娘に覆い被さり、死を、覚悟したその時、
…刀を持った男性が、目の前に立っていました。
その方は物ともせず、目に見えぬ速さで
鬼の頸を斬り落とすと、
私達の怪我の有無だけを聞いて、
静かに立ち去られてしまいました。
お名前も何も聞けず、
そのままになってしまい…、
またお会いできたときは、
必ずお礼をお伝えしたいと
思っていました。
…そしてまた、私達は煉獄様に
この命を救って頂いたのです」
トミの瞳が静かに揺れていた。
「でも何故…兄を見て、
その時のことを思い出されたのですか…?」
千寿郎が身を乗り出すように、トミに問う。
トミは、千寿郎の瞳をしかと見つめた。